研究実績の概要 |
2023年3月9, 11, 14, 16, 8日にTheoretical Linguistics at Keio-EMU(オンライン)にてNoam Chomskyを中心とした研究者による講演が行われた。この講演とそれと同時に公開されたChomskyの未出版論文(今後出版予定)により依拠する理論的枠組みに大きな変化が生じた。この新たな理論的枠組みはボックス理論(box theory)と呼ばれる。 このような状況の中、昨年度から引き続き等位構造・付加構造の真の統一的説明に向けて検索Σという操作に着目しながら研究を進めたが、複数の理論的問題に直面した。特に内部併合(Internal Merge)適用後の要素がその後の派生から「分離され」、位相(phase)主要部からのアクセスを除きそれ以上アクセスできなくなるという新たな派生の仕組みは私がこれまで行ってきた研究にも大きな影響を与えた。この新たな理論的枠組みは不明点が多く、さらに、Σが本枠組みでどのように機能しているのかという点について精査する必要が生じたため、今年度はその点に集中して研究を進めた。まずは本枠組みに至るまでの構造構築操作「併合」をもう一度以前の理論から見直す過程で書評を書いた(英文學研究 支部統合号 vol.XVI)。そして、日本言語学会第166回大会(2023年6月17, 18日)のワークショップと慶應言語学コロキアム(2023年9月9, 10日)での口頭発表で、新たな理論的枠組みであるボックス理論で不明な点を明らかにした上で、本枠組みでΣが一致や束縛において自然な形で機能している可能性を示した。言語現象としては、主に一致現象、wh移動現象、whの取り出し不可条件、束縛現象を説明するような発表となった。また、この研究発表の内容を発展させたものが書籍(2024年11月刊行予定)に掲載される予定である。
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