研究課題/領域番号 |
22K13116
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
朱 冰 九州大学, 言語文化研究院, 准教授 (30827209)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | テキスト的意味 / 間主観的意味 / 語用論的標識 / 談話標識 / 中国語 / 主観化 / 間主観化 |
研究実績の概要 |
本年度では、共時的レベルに現れるテキスト的意味と間主観的意味の連続性について、助言・勧誘を表す中国語の副詞“不妨”を例として、その間主観的意味の分化を考察した。 分析にあたって、Ghesquiere et al.(2012)が提案した間主観性の分類を援用した。Ghesquiere et al.(2012)は、間主観性を「態度的間主観性(attitudinal intersubjectivity)」、「応答的間主観性(responsive intersubjectivity)」、「テキスト的間主観性(textual intersubjectivity)」という3つの下位タイプに分類している。 考察の結果、助言・勧誘を表す“不妨”は、ヘッジ機能を持っており、応答的間主観性と態度的間主観性を表すことができるのみならず、条件、理由、目的などを表す接続詞と共起し、テキストの結束性に貢献しながら、聞き手に対してテキストの内部関係に対する理解と解釈を促している側面も持ち合わせており、テキスト的間主観性も同時に表されることが確認できた。 このケーススタディを通じて、もともと典型的な間主観的意味を表す語用論的標識(pragmatic marker)が、特定の談話文脈においてテキスト的機能も積極的に果たせることが分かった。間主観的意味とテキスト的意味は、そもそも密接な関係を持っており、機能上、連続しているものではないかと考えられる。また、発話行為領域の従属節が含まれる複文は、この連続性を顕著に観察できる文脈環境だと推測できる。さらに、テキスト的意味の解釈における聞き手の存在及び話し手と聞き手のインタラクションを認識することによって、テキスト的意味の間主観的側面が顕在化するようになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テキスト的意味と間主観的意味の連続性を示す典型例を取り上げ、実例に基づいて考察を行った。考察の結果は、関連の学会で報告し、建設的なコメントももらい、論文でまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、関連の表現を考察し、間主観的意味とテキスト的意味の連続性についてさらに探っていった上で、両者の相互拡張のパターン及び拡張のメカニズムに対する解明を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたパソコンの購入は、現在使用ているものの状態を踏まえて検討した結果、次年度以降の購入にした。
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