研究課題/領域番号 |
22K13120
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
飯田 奈美子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (60896885)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 通訳行為 / 会話分析 / 受け手性 / マルチモーダル分析 |
研究実績の概要 |
2022年度の研究の成果は、通訳者の身体の動きについての予備的研究として、既採録データの模擬医療通訳場面(看護師と患者の会話を通訳者が訳出)における、通訳者の聞き手性の特徴について通訳データを用いてマルチ・モーダルな分析を行ったことである。 看護師―患者会話を通訳する通訳者は、話者の一方(看護師)の発話を聞くときは、その通訳者のホームポジション(ペンを持ち、視線を自分のメモに向けるなど)に固定し、最小限度の理解を示す行為(うなずき、小さな声で「うん」というなど)を行い、発話完了可能点において、受け手を示す反応(「なるほど」などの発話)は基本的にしないことが観察された。しかし、看護師―患者―通訳者の相互行為のなかで、局所的なトラブル(看護師の説明の訳出を患者が聞いても、看護師が期待する反応が出てこなかった)が発生すると、看護師から通訳者に対して受け手性を引き出す発話がなされ、通訳者はその場に適切な受け手性を提示し、受け手性の反応を患者に引き出すデザインで訳出されたことが観察された。 このことから、通訳実践中における通訳者の身体性は、通訳者がその場で実践しなければならない行為を遂行するための限られた資源の中の一つで、通訳者はその身体性を有効に使いながら自らのミッションを遂行していると考える。このような結果から、通訳者の視線の向きや、メモ取りの態勢を細かくみていくことで、通訳者のレリバントな反応を定めることができ、それをもとに詳細質問の機能を明らかにすることができるのではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況は、おおむね順調に進んでいるといえる。通訳行為における通訳者の身体の動きを中心に通訳行為のレリバントについて分析をし、その結果を学会発表、論文投稿(査読中)することができた。今後は、通訳行為のレリバント性についてさらに事例を集めながら分析を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の研究では、聞き手時の通訳者の身体の配置や振る舞いを分析、整理した。それによりレリバントな通訳者の身体性がどのようなものかについて見通しをもつことができた。 2023年度は、引き続き、通訳者が発話(訳出・詳細質問などの自発的発言)をするときの身体の配置や振る舞いについて分析し整理する。通訳実践における聞き手・話し手の場合の通訳者の身体性の特徴をまとめることで、レリバントな通訳者の身体性、どのような体勢、どのような振る舞いによって通訳という行為を参与者たちに提示し、参与者たちがそれをどのように理解しているかを明らかにしていく。また、新規データ採取を行い、課題2の「詳細質問」の分類も同時にすすめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度前半に体調不良があり、調査を後半に後ろ倒ししたため、年度内で完結することができず2023年度にずれ込んでしまった。2023年度はずれこんだ分の調査計画も立てており、順調に調査を行うことができると考えている。
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