研究課題/領域番号 |
22K13122
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研究機関 | 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所 |
研究代表者 |
黄 海萍 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 研究系, プロジェクト非常勤研究員 (80865543)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | チワン語 / 龍茗方言 / 文法記述 / アスペクト / 使役表現 / 受身表現 |
研究実績の概要 |
本年度は研究の初年度に当たるため、研究課題の遂行に必要なパソコン、イヤホンなどの備品を購入した。また、アスペクト、使役、受身の研究に関する各個別言語の専門書、通言語的類型研究の専門書などの参考図書を購入し、先行研究についての分析を行った。 COVID-19により、現地調査はできず、WeChat、Skypeを使ってオンラインで現地との面談調査を行なった。オンラインで 収集できたデータを元に、チワン語龍茗方言(以下、龍茗方言)の時の表現を考察し、龍茗方言の時間詞、それに共起する動詞や動詞助詞およびその他の語句が異なる統語環境にある場合の意味・機能を明らかにした。また、先行研究の検討を踏まえて、龍茗方言の使役表現や受身表現について分析を行い、龍茗方言の使役や受身標識、使役文や受身文の基本的な構造などを明らかにすることができた。 アスペクトに関する論文1篇が学術誌に掲載された。使役表現に関する口頭発表は国際的な東南アジア諸言語の研究集会である東南アジア言語学会 (Southeast Asian Linguistics Society) 第32回大会に採択された。受身表現に関する論文は公開に至らなかったが、2023年度前半に学術誌に投稿予定である。 このほかの研究実績としては、チワン語北部方言地域にある広西チワン族自治区の田林県の八桂方言地域で採録したチワン語の歌謡動画データに関する翻訳・解説の公開を行った。チワン語の歌謡動画の字幕は国際音声記号、標準チワン文、日本語で表記し、歌謡の言語的情報、韻律分析や文化的な情報に関する解説も付けて、一氾文学会の機関誌『半文』(https://litteraegenerales.net/bulletin-half/)にて5回にわたって連載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19により、対面での言語調査はできなかったが、WeChat、Skypeを使ってオンラインで面談調査を行なうことができた。その結果、アスペクト、使役表現、受身表現に関するデータは問題なく集められた。また、歌謡動画に関しても現地母語話者の協力により、実現することができた。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の収束によって調査が行えるようになるが、効率が良いWeChat、Skypeを使ったオンライン調査も継続する予定である。来年度は、数量表現、否定表現、接続詞と複文構造などを明らかにし、これまで16回にわたって連載した「チワン族の昔話」をもとに、『龍茗方言の昔話』(文法概説付き)の刊行を準備する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(未使用額が発生した状況) 当初、2022年度計画では、現地調査をおこなう予定であった。しかし、研究過程でCOVID-19により、現地調査はできず、WeChat、Skypeを使ってオンラインで調査を行なった。そのため、現地調査の旅費が発生せず、未使用額が生じた。 (次年度における未使用額の使途内容) 2023年度は現地調査の実施と海外で開催する国際学会での発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることにしたい。
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