研究実績の概要 |
最終年度においては、結果句の意味特性に着目することで、Rappaport HovavとLevinらが提唱する様態動詞と結果動詞の区分や結果構文がコード化する使役状況のタイプについて新たな分析の視点が得られることを示した。 to silenceとinto silenceは、様態動詞と結果動詞の両者と共起可能であるが、COCAコーパス調査の結果、into silenceはto silenceと比較して、結果動詞(特に使役心理的変化を表すもの)と共起する割合が圧倒的に高いことが判明した(304例中267例)。また、beat, batterのような様態動詞やintimidate, bullyのような結果動詞はto silenceではなくinto silenceとしか共起できないことが分かった。これらのことから、結果構文に生起する動詞に対する「様態」や「結果」という意味解釈は、結果句の構成要素である名詞(silence)の多義性及び前置詞(to, into)の概念的意味などとの整合性に基づき派生的にもたらされ得るということを主張した。尚、本内容の論文が2025年刊行予定の『語彙意味論の広がりと深まり』(仮題)に所収されることになっている。 また、結果構文は「直接使役関係」を表さなければならないとされていたが、PP結果句を伴うタイプの中に「間接使役関係」をコード化する事例が観察されることを指摘した。そして、それらの事例の多くを識別することが可能となる点においてここでも結果句の意味特性を参照することの有用性が確認された。例えば、out of a jobやinto a jobによって喚起される百科事典的知識から「使役主と被使役者間の因果連鎖に介在使役者が関与するタイプ」や「結果事象の実現に関して被使役者が自律性を示すタイプ」の成立が動機付けられるのである。
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備考 |
(1) 英語結果構文における動詞の記述性と間接使役性 (2023年 8月25日 大阪認知言語学研究会, 大阪大学) (2) 英語結果構文から見た「様態」と「結果」(2024年 1月27日 大阪認知言語学研究会, オンライン開催) (3) 英語結果構文における「語彙化された」動詞の「様態」再考 (2024年 2月17日 KLP研究会, 大阪大学)
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