研究課題/領域番号 |
22K13173
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
鈴木 健太郎 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40757134)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 語源学習 / 意味的透明性 / 形態素 / 接頭辞 / 語根 |
研究実績の概要 |
2023年度は,2022年度の調査の追試を行った。昨年度の実験では学習時とテスト時に形態素とその意味を提示することで疑似的に知っている形態素を用いた語源学習の効果検証を行ったが,現実世界における想起条件を考慮すると効果を過剰評価していた可能性が残る。そこで,事前に学習した形態素を用いた語源学習の効果を検証した。 実験では,27名の日本人大学生がまず語源学習条件の目標語に含まれる32の形態素 (接頭辞×16,語根×16) を3日間にわたり合計90分学習した。その後,それらの形態素を含んだ16語 (透明性高×8語,透明性低×8語),語源学習が適用できない語 (自己方略条件) を学習した。学習時はスクリーン上で目標語が30秒ずつ提示され,語源学習条件では目標語とその意味に加えて,形態素とその意味も提示された。目標語に関する知識を測定するために,目標語のみが提示されその意味を回答する意味再生テストを事前,学習の直後と1週間後に測定した。同様に,形態素の意味再生テストを学習開始前と1週間後に測定した。 分析の結果,語源学習条件におけるテスト得点は透明性に関わらず自己方略学習条件よりも高かった。形態素テストの得点率が遅延テストの際には約60%にも関わらず語源学習の優位性確認されたことを考慮すると,語源学習の効果は頑健であるといえる。形態素の知識と語源学習の効果を詳細に検討するために,遅延形態素テストの結果に基づく形態素知識 (i.e., 無し,接頭辞のみ,語根のみ,接頭辞 + 語根) と目標語の再生の関係を検証する事後分析を行った。その結果,接頭辞と語根のどちからを知っていることは何も知らない場合よりもテスト成績がよいものの,両者を知っている方が好ましいことが示唆された。 これらの成果は,2023年12月に開催されたVocab@Vicで発表し,研究者から研究に対する洞察を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り調査を実施することができ,2024年度以降の調査の準備および構想についてのめどが立っているため。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度以降は語源学習における意味的透明性の役割について,個人差を含めて具体的に検討していく。 これまでの研究から,形態素と語全体の意味的関連度である意味的透明性は語源学習の効果において重要な役割をすることが明らかになった。ただし,透明性の知覚には個人差があること (Wang et al, 2020) を踏まえると,どのような学習者が語源学習の恩恵を受けやすいかを明らかにすることが必要であると考えられる。 そのため,今後は接頭辞と語根からなる語源学習における透明性の知覚と学習成果の関係,透明性の知覚に与える学習者要因 (e.g., 語彙サイズ,形態素知識) の役割を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
日程の都合で国際学会への参加を見送ったため。2024年度は,国際学会に参加し,研究成果を公表する予定である。
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