研究課題/領域番号 |
22K13207
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
谷 徹也 立命館大学, 文学部, 准教授 (10781940)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 日本近世史 / 壬辰戦争 / 文禄・慶長の役 / 壬辰倭乱 / 抗倭援朝 |
研究実績の概要 |
二年度目となる2023年度は、史料や文献収集を進めるとともに、本科研での研究成果を公表しつつ、より大きな文脈に位置づけることを目指した。とりわけ、大きな成果としては、谷徹也「「豊臣の平和」と壬辰戦争」(牧原成征・村和明編『日本近世史を見通す』1列島の平和と統合―近世前期―、吉川弘文館、2023年9月)を発表できたことである。 拙稿では、東アジア「近世」化論を踏まえたうえで「壬辰戦争」の学術用語を選択する意義を述べたうえで、日本・朝鮮・中国の史資料を活用しつつ、現状の到達点を踏まえ、自身の見解を示した。その際、①交渉と儀礼における交錯、②人と富の交錯、③情報と価値意識の交錯という三つの交錯を切り口に分析を行い、「豊臣平和令」論(いわゆる「惣無事令」論)の位置づけについても言及を行った。 ①については、国内での天下一統と対外戦争における交渉と服属手法の関係を整理しつつ、講和交渉における明側と日本側の力点の相違を解明した。②については、「唐入」の初発や主因をめぐる議論を整理し、東アジアの物流・人流の中に位置づけつつ、私見を述べた。また、兵粮支給政策についても通説の見直しを図った。③については、「平秀吉」という呼称や天皇をめぐる認識の差異、改元など戦争遂行に直接関わらない情報の階層差と取捨選択、交渉や儀礼において様々な情報操作が存在したことなどを指摘した。また、秀吉の掲げた「仁政」の実態を分析しつつ、帰陣大名の〈民政〉への認識の転換を展望した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の後半では、上記に述べた研究成果の公表とともに、東京での諸機関において史料・文献調査を積極的に進めることができ、研究は比較的順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
史料や研究の収集と分析を続けつつ、文献史料にとどまらず、絵画資料など多様な素材をも検討材料とすることで、更なる研究の推進を目指したい。
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