本研究の目的は、近年の荘園制研究の成果との接続を意識しながら、一国平均役の徴収において負担量が増大していた鎌倉幕府の関与に注目することで、平安後期からの単純な延長では説明がつかない鎌倉期固有の一国平均役の賦課・徴収実態について具体化することにある。 令和5年度(2023-24)は、研究実施計画に基づき、【Ⅰ】鎌倉期に賦課された全国対象の一国平均役に関する史料の検出作業を進め、データを収集・整理した。一方で、本年度に予定していた【Ⅱ】地域性の高い一国平均役の史料調査については、手許にある自治体史からの検出は一部できたものの、年度末に計画していた出張調査を実施できなかった。【Ⅱ】については、次年度以降も引き続き史料の検出・整理作業を続けることにしたい。 上記以外では、一国平均役が賦課された領域型荘園に関して「領域型荘園の成立と治承・寿永内乱」(『新しい歴史学のために』302号)を発表した。荘園制の成立にともない各地で矛盾が蓄積される中、平家政権の地方支配が潜在した矛盾を先鋭化させ、全国的な内乱を誘因したことの見通しを示した。内乱からの復興期(12世紀末、文治~建久年間)に賦課された一国平均役(役夫工米・造宇佐宮役や各地の一宮役など)の徴収実態を考える前提としたい。また、一国平均役の賦課主体である朝廷(天皇)と関わって、『平安時代天皇列伝』(戎光祥出版)に「高倉天皇」・「安徳天皇」を寄稿した。
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