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2023 年度 実施状況報告書

帝国の戦後処理と企業財産に関する基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K13215
研究機関公益財団法人三井文庫

研究代表者

吉田 ますみ  公益財団法人三井文庫, 社会経済史研究室, 研究員 (50844156)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード満州 / 満洲 / 終戦 / 商社 / 中国共産党 / 中国国民党 / ソ連軍 / 帝国
研究実績の概要

2年目である2023年度は、以下の成果を挙げた。
(1)史料整理
昨年度から引き続き、敗戦時、敗戦後の日本国外、元占領地に存在した企業財産に関する未整理史料の整理を進めた(アルバイト雇用)。目録自体は昨年度に完成していたが、アーカイブでの公開準備として、分類・再整理の作業を行った。
(2)中国大陸残留者の日記の翻刻・発表
昨年度発見した、三井物産奉天支店に勤めていた香川卓一氏の日記(1945年8月~1946年2月)を、史料整理に従事していたアルバイトの大学院生と協同で14万字の内容をすべて翻刻し、解題と詳細な語句説明を付して『三井文庫論叢』第57号(2023年12月)に発表した。終戦時に旧満州国に残留していた日本人が残した日記はそもそも研究者により発見されている点数が少なく、またこれまで公開されたものでは約9万字が最大であった。解題においては、分量だけでなく商社社員という執筆者の属性を理由とする史料翻刻の意義や、日記の記述から部分的にではあるが判明する終戦時の満州の社会経済、商社の支店幹部による支店職員の生活保護や商業活動、あるいは商社のソ連軍、中国共産党軍、中国国民党軍への対応について論じた。その他にも日記から浮かぶ論点は多岐にわたる。たとえば新京にいた高碕達之助(満州重工業開発総裁)の日本人引揚における活躍は既に知られているところであるが、より生活空間に近いところで旧満州国の商社/商社職員が旧日本帝国の人々(日本人に限られない)に果たした役割なども、日記から読み取ることができる。このように本日記は歴史研究に大いに資する考え、翻刻・発表に加え、日記そのものを三井文庫において公開し、研究者が閲覧できるようにした。
なお日記の発見と翻刻は、商社社員が目撃した終戦直後の満州の社会と経済という観点からNHKのニュース番組に取り上げられ、研究者以外の人々にも広く認知されたと捉えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

予期せず発見された香川卓一氏の日記を翻刻したため、14万字におよぶ手書き文字の読解、翻刻、『三井文庫論叢』での発表という一連の作業に多大な時を要することとなった。
そのため、在外財産の研究という観点からすると、史料群に含まれている他の企業史料の分析がやや滞っている。

今後の研究の推進方策

最終年度にあたる2024年度は、残された史料整理の作業を進めつつ、終戦後の企業財産の処理・接収にかかわる史料の読解、論文執筆を行う。
2022年度に明らかにした大蔵省、GHQ/SCAP、日本銀行による企業財産集計の過程に対し、今年度は企業(三井物産)が朝鮮、中国、東南アジアでの財産接収や、GHQ、日本政府による財産処理にどのように対応したのかという点に焦点を当てる。手元の未整理史料だけでなく引き続き日本の公文書の調査も行い、帝国解体時の企業・国家間関係を明らかにするという本研究課題の目的に対して一定の回答を示したい。

次年度使用額が生じた理由

「現在までの達成度」で述べた通り、アルバイト雇用者と協同で日記史料の翻刻、発表を行ったことに想定外に多くのリソースを注ぐことになった。その際、アルバイト雇用者には史料整理よりも日記翻刻作業を優先してもらったため、史料整理の時間が減少し謝金の支出が抑えられることとなった。次年度は年度内の史料整理作業の完了を目指しアルバイト雇用への謝金が多くなるため、次年度使用額はその部分に充当させる予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 終戦直後の満州と三井物産奉天支店 : 香川卓一日記の翻刻と紹介2023

    • 著者名/発表者名
      大窪有太・吉田ますみ
    • 雑誌名

      三井文庫論叢

      巻: 57 ページ: 1,326

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 1945年8月~1946年2月の三井物産奉天支店―香川卓一日記の翻刻と解説2023

    • 著者名/発表者名
      大窪有太・吉田ますみ
    • 学会等名
      三井文庫研究会

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公開日: 2024-12-25  

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