研究課題/領域番号 |
22K13218
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三浦 雄城 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (20909410)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 儒教 / 国教化 / 符瑞 / 讖緯 / 緯書 / 天人関係 / 儀礼 |
研究実績の概要 |
本研究は、漢代の儒教は、先秦期以来の帝王支配に関する様々な思想・観念をその道徳的・政治的理念で整理し、その過程で自らも「神秘性」「呪術姓」を内包する形に変容し、漢代以降も参照されるべき古典として継承された、という見通しを4つのテーマから検証するものである。2022年度はこのうち、3つのテーマについて進展が見られた。 テーマ1「緯書登場以前の皇帝と天地との関係」では、董仲舒の符瑞思想に着目し、その特徴を先秦期諸思想との比較から儒教の道徳を君主に求めるものだと把握した後、政界には魯・東海の弟子を通じて影響を与えたことを明らかにした。かつて研究会で報告した研究内容を、会で指摘を受けた「詳細な史料批判を通じて前漢武帝期の儒教をより積極的に評価すべき」というコメントに留意し、改稿した上でその会を主催した研究者の科学研究費基盤研究の研究成果報告書に寄稿した。これは2024年初頭に刊行される予定である。 テーマ2「緯書の出現」では、「河図」「洛書」の語が見られるようになる前漢末期から緯書の作成が始まったことを突き止め、これをまとめた原稿を学術雑誌(査読付き)に投稿し、査読者からのコメントを受けて再投稿を促された。2023年度はこれを改稿して再度投稿し、採用されることを目指す。 テーマ3「緯書の帝政理念「天子爵制」とその実際」では、「天子爵制」とは天と皇帝、皇帝と百官万民が孝と礼を基準に結んだ君臣関係としての秩序を端的に表現するものだと明らかにし、これをまとめた原稿を学術雑誌(査読付き)に投稿し、採用・刊行された。 2022年度の研究費は主として上記諸研究を遂行する上で必要となる文献の購入に当てられた。 2023年度は上記のようにテーマ2「緯書の出現」の論文を完成させるとともに、同テーマの別の論文を文章化することを目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要欄にも記したように、2022年度は論文として刊行されたもの、刊行予定の報告書に寄稿したもの、投稿して再投稿を促されたものなど、研究の進展が見られた。これらは喜ばしい成果ではあるが、反面、これらの刊行に注力したことで手つかずのテーマが出てきてしまったことも事実である。テーマ4「魏晋南北朝時代の王権を支える緯書の宗教性」は見通しこそ立っているものの、史料に則した具体的な検討には着手できていない。2023年度は刊行に至っていない論文原稿の完成を優先させながらも、このテーマ4の研究を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況欄にも記したように、2023年度は2022年度で刊行にこぎつけることができなかった論文原稿を完成させるとともに、テーマ4の研究を進展させることを目指す。後者については、漢代に続く魏晋期の儒教は一般に合理主義的と評され、特に緯書を非儒教的と批判する傾向が指摘されているが、申請者の予備調査では、魏晋南北朝、特に南朝の王朝交代の儀礼には、緯書が利用されていることを突き止めた。今後は、王朝交替の儀礼における緯書の役割と、緯書利用に関する漢と魏晋南北朝との間の継承と変化を明らかにすることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の研究費を使用するにあたり、必要不可欠の用途では処理できないほどの少額が残ってしまった。使用計画は無い。
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