研究課題/領域番号 |
22K13225
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
植田 暁 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター グローバル研究グループ, 研究員 (30848859)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 中央アジア / 匪賊 / 反乱 / ロシア帝国 / 植民地統治 |
研究実績の概要 |
本研究課題の中間成果発表として、学会報告を実施した。また、関連する課題に関して、論考と事典項目の執筆などを通じて研究成果の学会内外への発信に努めた。 本研究課題に関して、2023年6月に開催された内陸アジア史学会大会において、「トルキスタンの匪賊とロシア帝国による植民地統治」と題した個人報告を行い、研究課題遂行の中間発表を行った。本報告では、まず、歴史学における「匪賊」と呼称される現象の定義について、先行研究に基づいて整理・検討した。つぎに、植民地期中央アジアの匪賊に関して、主として国内機関所蔵およびオンラインで閲覧可能な新聞雑誌類、『トルキスタン集成』収録記事中に見える匪賊関連記事に関して、全般的な傾向を示した。さらに、いくつかの個別事例に注目して、具体的な検討を加えた。特に19世紀末にフェルガナ盆地で比較的長期間活動した匪賊団の事例を検討し、匪賊取締りにおける現地人郷長の役割を提示した。本報告によって、植民地期中央アジアにおける匪賊の具体像について、一定の輪郭を示すことができたと考えるが、エスニシティ間関係と匪賊現象との関連性など、さらに検討すべき課題もまた明らかとなった。 研究史上、植民地期中央アジアにおける治安の悪化や匪賊の横行は、綿花モノカルチャー化の進展に伴う現地の経済的変革とも関連付けて把握されてきた。この点に関連して、本研究課題の成果発信の一環として、事典項目「綿花から見た近現代史」を執筆した。 また、ウズベキスタンのタシケント市、フェルガナ盆地およびブハラ地方での現地調査を実施し、本研究課題に関連する史料・文献収集等を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外での文献調査を踏まえて、研究課題の中間成果発表として、内陸アジア史学会での学会報告を行い、現時点までの成果と今後の課題を明確化することができた。学会報告後、報告を通じて確認できた課題を整理し、改めて膨大な雑誌記事史資料に含まれる関連情報を洗い出すという基礎作業を進めている。 また、ウズベキスタンにおける史資料収集を主とした調査を実施し、重要な情報の収集を行うことができた。学会での報告において、中央アジアの匪賊の具体像に関して、一定の概要を提示できたが、個々の事例に関して雑誌新聞記事から得られる情報には限界があり、個々の事例に関してより詳細な情報を得るためには、現地公文書館におけるさらなる調査が必須である。第三年度以降、ウズベキスタンなど現地の公文書館において、特定の事例に集中して司法関係の史料等を調査することを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の学会報告で明確化された中間成果と今後の課題を踏まえて、着実に史料文献調査を実施していく。国内でアクセス可能な新聞雑誌類、『トルキスタン集成』収録記事類に関しては、タイトル等に匪賊や治安と明記していない記事に関しても、匪賊の活動に関して記述が見られる。記事の総数は膨大であるが、それらの記事内容を悉皆的に確認する作業を開始している。雑誌新聞記事の悉皆調査によって、植民地期中央アジアにおける匪賊現象の全体像を把握する作業を第三年度の調査活動のひとつの柱とする。 学会での報告において、中央アジアの匪賊の具体像に関して、一定の概要を提示できたが、個別事例に関して雑誌新聞記事から得られる情報には限界があり、個々の事例に関してより詳細な情報を得るためには、現地公文書館におけるさらなる調査が必須である。第三年度以降、ウズベキスタンなど現地の公文書館において、特定の事例に集中して司法関係の史料等を調査することを計画している。 あわせて、地理情報システムなどの人文情報学的な手法によって、史料情報を整理し、分析するという取り組みもまた推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度(第二年度)の使用額は、中央アジアにおける現地史料文献調査等によってほぼ予定通りに使用した。次年度使用額は主に、前年度(初年度)の出張調査計画がロシア・ウクライナ情勢のために変更を余儀なくされたためである。 初年度の計画変更に伴う次年度使用額に関しては、次年度(第三年度)以降の、中央アジア、特にウズベキスタンのタシケント市等の公文書館における集中的な公文書調査のために使用する予定である。中央アジアにおける公文書館調査が、次年度以降に集中的に行う必要がある理由に関しては、「今後の研究の推進方策」の項目に記述したとおりである。
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