研究課題/領域番号 |
22K13238
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
夏木 大吾 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 特任助教 (60756485)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 北海道 / 更新世末 / 適応行動 / 年代 |
研究実績の概要 |
令和5年度の調査として、更新世末に位置付けられる北海道の旧石器時代遺跡の発掘調査および既存資料の再整理・分析を実施した。また研究成果の一部をまとめ、学会発表において成果を報告した。具体的な実施内容は以下の通りである。 1)北海道における更新世末石器群の年代を解明するために、北見市吉井沢遺跡の発掘調査を実施した。旧石器時代末の忍路子型細石刃核を含む石器集中部に加え、遺跡居住年代の解明のために重要な焼土や炭化物集中を検出し、次年度の本調査に向けた調査区を設定した。前年度に調査した緋牛内20遺跡の遺物整理作業、土壌粒度分析を行い、成果報告に向けた準備を進めた。 2)帯広市大正3遺跡の縄文草創期資料、泉町A遺跡の旧石器資料の整理・分析を行った。大正3遺跡の調査では、石器の使用痕分析と型式学的な分析を実施した。泉町A遺跡では、出土資料台帳のデジタル化を行いながら、出土した細石刃石器群の属性に関するデータを整理、再検討した。 3)7月に北海道遠軽町で開催された国際黒曜石学会に参加し、遠軽町タチカルシュナイM-I遺跡と北見市吉井沢遺跡の黒曜石産地分析と石材需給について発表し、更新世末の二つの文化集団の適応的な行動戦略の違いについて議論した。7月にイタリアのサピエンツァ大学で開催された国際第四紀学会INQUA ROMA 2024に参加した。北海道における更新世末の石器群と年代の関係を整理し、現時点で示し得る石器群の変遷案を提示し、旧石器時代終末期に位置付けられる北海道の有茎尖頭器の出現と存続期間について議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、吉井沢遺跡の発掘によって、旧石器時代終末の細石刃石器群を発見した。遺物集中地点に重複する焼土と炭化物集中を検出されたため、次年度の本格的な調査にむけた準備を整えることができた。既存資料調査において大正3遺跡の使用痕分析では、北海道の縄文草創期文化を特徴づける石器タイプのいくつかに使用痕が検出され、更新世末人類の適応行動の解明に資するデータを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も北海道における更新世末の旧石器時代社会の変遷や行動的変化に関する議論を進めるため、野外発掘調査を中核とした研究を行い、関連する時期の資料調査や整理・分析を進める。野外調査としては北海道北見市吉井沢遺跡の発掘を行う予定である。吉井沢遺跡において遺物に関連する炉跡や炭化物集中を検出し、年代測定を行うことで更新世末の旧石器時代石器群の年代を明らかにしていく。また、帯広市泉町A遺跡、釧路市北斗遺跡の道内の既存資料の調査を引き続き行い、年代測定、空間分析、黒曜石分析等を行い、更新世末の石器群の内容および編年的な整理を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
野外考古学調査において、本来の計画とは異なり小規模な試掘調査を実施した。その結果、想定していたよりも発掘出土遺物の数が少なく、この整理作業に必要な経費が抑えられた。次年度に本格的な調査を行うことが確定しているので、残額を翌年調査の経費として使用する。
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