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2022 年度 実施状況報告書

学校教育の知識観がアフリカ狩猟採集社会にもたらす影響に関する言語社会化研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K13263
研究機関新潟大学

研究代表者

園田 浩司  新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (20795108)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2027-03-31
キーワード学習者の認知 / 学習環境 / 学校教育のメタファー / 学校化された思考法 / 社会化
研究実績の概要

本研究では、「私有財としての知」という知識観の観点から、カメルーンの狩猟採集社会に学校教育がもたらす影響を論じる。
今年度は、引き続き世界的に「コロナ禍」の状況に設定されており、安全な渡航(出入国)が困難であると判断したことから、国内において、まずは学校教育研究をめぐる報告者の論点について整理した。カメルーン狩猟採集社会における学校教育をめぐる相違点や問題点(とりわけ、学校教育制度ではなく、学習環境における学習者の認知という点に着目して)に整理し、出版した(園田, 2022)。また国際学会などでの参加・発表と分科会での質疑応答を通して、文化人類学や教育人類学の考え方において、小規模社会の学習環境を学校のメタファーを用いて論じる問題点について気が付いた(Sonoda, 2022)。なぜ私たちが「教えること」とか「学ぶこと」について考えるときに、学校のメタファーを使うのかをそもそも問わないといけないのではないか。対象を分析するための分析枠組みにおいて、そもそも分析者が、学校的まなざし(学校化された思考法)を持ち込んでしまう問題について整理した。こうした分析視角の課題が見えてきたことによって、来年度以降に予定している海外調査に生かす手立てを探っていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

「コロナ禍」(とりわけ日本における)のスキームにおいて、安全な出入国が日本、カメルーンの両国において確保されていないことから、渡航を見送らざるを得なかった。当初予定していたカメルーンでの学校教育に関する資料収集や現地調査における聞き取りが実施できなかった。かわりに、国内において、子どもの学習環境としての学校教育が抱える問題、またそれらの学習環境の特徴について、学習者の認知的側面の観点から捉え直す作業をおこなった。学習・教育の人類学研究者であるJean Lave、Etienne Wenger、David Lancyによる研究をはじめとした教育・学習論の再検討を進めた(とくに国際学会でのLancy氏とのやりとりの中で、問題の焦点化が可能となった)。そこから見えてきたのは、学校が持つ学習環境の特徴だけではなく、地域の学習場を「学校教育のメタファー」を用いて分析する、分析者の視点の問題であった(「学習の商品化commoditization of learning」「日常のなかの教室Everyday Classrooms」)。まずは、学校教育のメタファーを用いずに、地域の学習場をいかに記述することが可能か、という問いが新たに立った。

今後の研究の推進方策

安全な出入国が日本・カメルーン両国において確保され、かつある程度の政情安定が認められると判断できれば、現地調査が可能となる。その場合には、当初の計画に沿って研究を進めていく予定である。しかし、そうでないと判断される場合には、2年目となる今年度も引き続き、国内での資料収集、学校教育研究者らとの意見交換、また、これまでにフィールドで得られた調査データの見直しをもとに、問題の精緻化と理論化をおこなっていく。具体的には、カメルーン狩猟採集民バカ・ピグミーの人々の日常的なやりとりに埋め込まれた学校言説、とりわけ学校からの影響がみられる価値の言説である。「学校教育のメタファー」は、人々の日常的なやりとりの中にも見ることができると考えられる。そこで、どのような社会文化的文脈の中で、何に対してそうしたメタファーが用いられるか、またそうした語りがどのような社会的現実を作りあげているかについて、データを整理する予定である。

次年度使用額が生じた理由

「コロナ禍」(とりわけ日本における)のスキームにおいて、安全な出入国が日本、カメルーンの両国において確保されていないことから、渡航を見送らざるを得なかった。そのため、当初の予定に対して変更点が生じた。次年度において、関係書籍の購入などにあてる予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Socioecology shapes child and adolescent time allocation in twelve hunter-gatherer and mixed-subsistence forager societies2022

    • 著者名/発表者名
      Lew-Levy Sheina、Reckin Rachel、Kissler Stephen M.、Pretelli Ilaria、Boyette Adam H.、Crittenden Alyssa N.、Hagen Ren?e V.、Haas Randall、Kramer Karen L.、Koster Jeremy、O’Brien Matthew J.、Sonoda Koji、Surovell Todd A.、Stieglitz Jonathan、Tucker Bram、Lavi Noa、Ellis-Davies Kate、Davis Helen E.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: 1-16

    • DOI

      10.1038/s41598-022-12217-1

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 生きなおすための民話―人類学的フィールドワーカーの身体を学ぶ文化理解教育―2022

    • 著者名/発表者名
      園田浩司
    • 雑誌名

      日本国際理解教育学会研究・実践委員会研究成果報告書オンライン版 地域論プロジェクト 持続可能な開発/発展と地域の生活・文化・学び

      巻: 1 ページ: 1-170

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 「野生の思考」の共創的再現―トーテミズムをめぐる演劇手法ワークショップ―2022

    • 著者名/発表者名
      飯塚宜子, 園田浩司
    • 学会等名
      日本文化人類学会第56回研究大会
  • [学会発表] 個人を型に嵌めるのが「社会化」か?―狩猟採集社会の社会化論にむけて―2022

    • 著者名/発表者名
      園田浩司
    • 学会等名
      日本文化人類学会第56回研究大会
  • [学会発表] 民話を通した地域の学び―ローカルとグローバルをつなぐ歴史性と持続可能性―2022

    • 著者名/発表者名
      飯塚宜子, 孫美幸, 園田浩司
    • 学会等名
      日本国際理解教育学会第31回研究大会
  • [学会発表] Reconsidering the Question of “Do Hunter-gatherers Teach Children?”2022

    • 著者名/発表者名
      Koji Sonoda
    • 学会等名
      The Thirteenth Conference on Hunting and Gathering Societies (CHAGS13)
    • 国際学会
  • [図書] 教育の起源を探る2023

    • 著者名/発表者名
      安藤寿康
    • 総ページ数
      266
    • 出版者
      ちとせプレス
    • ISBN
      4908736294

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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