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2023 年度 実施状況報告書

琵琶湖産アユ種苗の流通ネットワークに関する広域民俗誌の試み

研究課題

研究課題/領域番号 22K13273
研究機関滋賀県立琵琶湖博物館

研究代表者

加藤 秀雄  滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 学芸員 (10868871)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード琵琶湖 / アユ / 環境民俗学 / 民俗誌 / 科学 / 養殖 / 放流
研究実績の概要

本研究の2年目となる2023年度は琵琶湖のアユと人間の関係を民俗誌として描く視点を明確にすることを目的とした研究を進めた。まず隣接諸学の最新の知見を取り入れるために、環境社会学と文化人類学で自然と人間の関係をテーマとする研究を精力的に進めている研究者を招いた公開研究会を企画し、自然と人間の関係を議論する際には、自然資源が「ふえる/へる」現象に対する人びとの認識と、それを「ふやす/へらす」ためにどのような実践がなされているかに注目する必要があることを確認した。また現代における自然資源が「ふえる/へる」ことの把握と、「ふやす/へらす」ための実践においては、様々な科学的知識や技術が動員されており、伝承知にフォーカスする従来の民俗学の視点では、こういった現象は対象化できないという課題があることも浮き彫りになった。そこで本研究では実地でその具体的な様相を確認するために、滋賀県水産試験場、安曇川人工河川、漁業協同組合、民間の養殖事業者などを訪ね、琵琶湖のアユ資源の増減がどのように把握され、その資源量を維持するためにどのような実践が行われているのか確認するフィールドワークを行った。
その結果、現代におけるアユ資源の「ふえる/へる」ことの把握においては、産卵量や稚魚数の調査などがミクロな視点で行われ、複雑な数式を用いた調査結果の解析なども行われていることが明らかになった。またその情報は専門家だけでなく、漁業者とも共有され、資源量を「ふやす」あるいは資源量の減少に関わる微生物やウィルスを「へらす」ためにも、様々な科学知や技術が関係していることが見えてきた。
本研究の最終年度となる2024年度は、こうした現代における琵琶湖のアユと人の関係をめぐる情報を基礎としながら、湖産アユ種苗の他地域における利用にフォーカスした研究を進めていく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度からは本格的に滋賀県水産試験場の職員の協力が得られるようになり、琵琶湖周辺でアユ漁を行っている漁業者や養殖業者などとのパイプの形成が進んだ。また琵琶湖のアユと人間の関係の変化をテーマとした学会発表や雑誌・新聞記事の執筆を進めていく過程で、研究の方向性が定まっていき、これに即したフィールドワークと情報収集が進んでいる。とりわけこれまで明らかにされていなかった昭和初期のアユ種苗の行先と、アユの輸送、増殖に関わる科学的実験や研究の概要が明らかになり、新しい環境民俗学のあり方をめぐる課題が浮き彫りになりつつある。以上のことから本研究の進捗状況について、「おおむね順調に進展している」と判断した。2024年度は引き続き現地調査と資料収集、研究成果の発表を行い、論文化に向けた作業を進める。

今後の研究の推進方策

本研究は従来の地域を限定した民俗誌と異なるスケールの広域民俗誌のモデルケースを提示することを目指して進めているが、琵琶湖のアユ種苗の全国的な拡散の歴史が示すように、その背景にはアユを活魚として輸送するための科学的知識の蓄積や技術の発展がある。本研究では琵琶湖のアユ種苗の移動とそれが全国のアユ産地に与えた影響を描きながら、同時にフィールドにおける科学的知識と技術のインパクトを意識した研究を今後進める予定である。また湖産アユが全国に放流されたことで生じた在来の生態系における遺伝的かく乱や魚病の拡散といった問題にも注意しながら、生活者の立場を尊重しつつ同時に生態系の維持にも配慮した議論をすすめる必要性についても議論を深化させていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が無いため、記入しない。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 湖産アユ種苗の需要と供給体制の展開をめぐって2023

    • 著者名/発表者名
      加藤 秀雄・山本 充孝
    • 学会等名
      琵琶湖博物館研究セミナー

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公開日: 2024-12-25  

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