研究課題
今年度の主たる研究として、日本の行政組織体系上、特殊な位置付けを付与されている、デジタル庁・個人情報保護委員会についての研究と、ドイツ連邦共和国基本法で採用されている「所管原理(Ressortprinzip)」についての研究が挙げられる。前者(デジタル庁・個人情報保護委員会)について、まずデジタル庁は、復興庁をモデルとして設計されており、行政各部内において内閣府に並ぶ特殊な位置付けを有するところ、このような位置付けの適切さについて、再考する機会を持つことができた。また、個人情報保護委員会については、従来から行なっていた独立行政委員会の個別的研究の一環として検討を行った。同組織については国際的整合性の観点から組織形態の選択が行われていることからして、比較法的検討が特に意味を持つところ、ドイツの憲法・行政法理論に加えて、EUの欧州司法裁判所の判決等も踏まえた研究を行うことができた。個人情報保護委員会については、これを研究する共同研究に今年度から参加したこともあり、今後とも研究の一つの軸になると思われる。後者(ドイツ連邦共和国基本法で採用されている「所管原理」)については、この原理を主題とする稀有なモノグラフィーの読解に基づき、論文を執筆した。研究により、ドイツにおいて、各省横断的に行政事務を行う行政組織の設置については憲法上のハードルが設けられていることを明らかにすることができた。日本における分担管理原則の詳細な分析については、検討課題として残されている。
2: おおむね順調に進展している
今年度も研究課題に関連する論文(デジタル庁、個人情報保護委員会、分担管理原則、行政組織編成における執政・行政分離の意義)を多数執筆することができており、分析すべき文献についても相当程度収集・検討が進んだ。また、来年度の研究についてもおおよその見通しがついている。
来年度は最終年度のため、研究のまとめを行う。本研究テーマについて執筆した論文を整合的に再構成して、研究テーマである「行政各部の編成を統御する法的原理・原則」を可視化したい。
参加予定であった学会への参加が叶わなかったため、旅費の支出が抑えられ、次年度使用額が生じた。来年度は、学会への参加のほか、日本では貸借が困難な海外文献の購入費用に支出する。
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