研究課題/領域番号 |
22K13283
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
杉山 有沙 帝京大学, 法学部, 講師 (00705642)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
|
キーワード | 自律 / 障害者 / 社会的弱者 / 関係性 |
研究実績の概要 |
本研究課題について、2022年度は、障害者を初めとする社会的弱者の自律の保障について、日本国憲法論への応用可能性について研究をした。具体的に、2022年度の研究で明らかにした内容は下記の内容である。 第1に、本研究課題では、日本国憲法における社会的弱者の人権保障をめぐる論理構成を提案することに至った。そもそも、日本国憲法が立脚している「近代立憲主義」との整合性や、社会的弱者も当然対象にするものの、そうではない者に対する権利保障が主要な問題になる思想良心の自由や表現の自由などの多くの人権が規定の存在を踏まえ、社会的弱者の人権保障の文脈であったとしても、樋口陽一のいう反結社主義的な「強い個人」を前提にすべきである。無論、事実上、存在するであろう「社会的弱者」をめぐる人権問題の存在を無視するべきだと考えているわけではない。そこで本研究は、「強い個人」論の補完原理として「弱い個人」論を据え、存在が無視される社会的弱者の存在を認識した上で、あえて目隠しをすることで、近代立憲主義に基礎づけられる日本国憲法の人権のカタログの保障の効力を堅持しつつ、社会的弱者の人権を守る手がかりにすることを提案した。 第2に、本研究課題は、日本国憲法において「自律」と「自己決定」は重なりあうが異なるものであると言うことに注目し、日本国憲法上、「自己決定(権)」に関しては「自己決定能力がない者」がいることを従来の学説にしたがって認めるものの、「自律」に関しては「自律能力がない者」は存在しないと捉えると言う帰結に至った。ただし、自己決定能力がない者を始め、事実上、自律能力の存在を疑問視せざるを得ない者を無視することもできない。そこで、本研究は、特に「自律的な生」の保障に関して、「関係性」に活路を見出し、その関係性の質の保障の憲法的な性格を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度の研究内容・成果は、本研究課題の確信となるものと位置付けられるから。今後は、この研究成果をもとに、生存権の保障の際に、障害者を初めとする社会的弱者の自律の観点を組み込む方法を検討して行きたい。
|
今後の研究の推進方策 |
研究の概要と進捗報告に記載した通り、本研究課題の核心的なものについては、おおよそ方向性を確認することができた。しかし、当然、これは、本研究課題の「視点」と「姿勢」を明らかにすることができたに過ぎない。今後、この視点と姿勢を反影させて、制度設計のあり方や、司法審査基準、そして、「障害者」以外の社会的弱者の権利保障への応用のあり方を研究する必要がある。今後は、これらの観点を順に、そして丁寧に、研究していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由であるが、申請者の計算間違いであり、全て使用したつもりだった。このお金は、書籍を購入するために使用したい。
|