研究課題/領域番号 |
22K13336
|
研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
秦 正樹 京都府立大学, 公共政策学部, 准教授 (10792567)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 敗者の合意 / 野党政治 / 政治的敗者 / ミニ野党の勃興 |
研究実績の概要 |
2022年度は,研究計画のうち,主に研究課題1「野党支持者における「敗者の合意」の現状把握」に力点を置いて取り組んだ.より具体的には,(1)「敗者の合意(Loser's Consent)」に関する近年の先行研究の整理と検討,および(2)野党支持者に限定した大規模WEB調査を行った.まず(1)については,「敗者の合意」に関する知見の最も基礎となるAnderson et al.,(2005)以降,ほとんど分析されてこなかったが,2016年のイギリスの欧州連合離脱をめぐる住民投票(いわゆるBrexit)を境に「敗者の合意」をめぐる先行研究は増えつつある.ただし,Brexit以降の先行研究は,理論的な検討に留まるものも多く,さらに政治的敗者全体に一般化する議論もほとんど見られなかった.(2)について,2023年3月に,野党支持者および無党派層の限定した10,000人を対象とするWEB調査を実施した.そこでは,(A)「敗者の合意」に関連する設問を多く設け,(B)さらに支持理由を自由記述回答で尋ねている.(A)について潜在クラス分析により分析したところ,立憲民主党や共産党などのリベラル系野党支持者は「敗者の合意」があまり担保されておらず,日本維新の会や国民民主党などの新興野党支持者にはその傾向が見られなかった.また(B)についてトピックモデル(LDA)を用いて分析したところ,先述したリベラル系野党・新興野党の支持は政策よりも政党イメージが重要であるが,NHK党(政治家女子48党)や参政党の支持者は,政策を重視して支持する傾向にあることが明らかになった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた研究計画のとおり,先行研究の整理および1万人の野党支持者調査を実施し,それぞれについて分析も進んでいる.これらの分析結果は,2023年度日本選挙学会で報告することが決定しており,そこでのコメントや議論を踏まえて論文化することを計画している.以上のことから,概ね順調に進展しているといえる.
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は,2022年度に実施した1万人の野党支持者アンケート調査のさらなる分析およびその報告(2023年度日本選挙学会)を通じたフィードバックを得て,早期に論文として投稿することを目指す.また,これらの分析結果から「敗者の合意」のコアを成す要素を発見した後,研究課題2「敗者の合意」の形成メカニズムの解明に取り組む.こちらの研究課題については,当初の想定通り,選挙の結果,仮に敗者になった(すなわち,投票先政党が野党になった)場合を想定したヴィネット実験を行う.このヴィネット実験で用いる属性・水準は,2022年度実施したアンケート調査をもとに設計するが,それが完了し次第,2000人程度の被験者を対象としたWEB調査の実施準備に入る.具体的には,2023年度の秋ころまでには倫理審査に申請し,冬ころまでには調査を行い,その分析結果は2024年度の日本政治学会や日本選挙学会において報告することを予定している.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究費は計画通りに執行したものであるが,バイアウトにかかる費用が想定よりも少し安価であったために1万円程度が差額として発生した.この費用分は,今年度の調査に上乗せして用いる.
|