研究課題/領域番号 |
22K13341
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
安中 進 弘前大学, 人文社会科学部, 助教 (80880202)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 生活保護 / リーマン・ショック / コロナ禍 / サーヴェイ実験 / パネルデータ |
研究実績の概要 |
生活保護の財源ともなる財政政策に対する人々の認識を政府の財政と家計の財政の類推という観点からサーベイ実験を行った。イギリスで行われた研究で示唆されていたように、日本においても国家の財政に対して家計の類推を用いても、その影響により人々が福祉の財源としての国家の国債発行に寛容になるわけではないという結果となった。この研究成果は、Household Analogy Revisited: How do Japanese People Respond to Government Borrowing and Assets?と題して、Southern Political Science Associationや公共選択学会において報告し、好意的な評価が得られた(前者では共著者の早稲田大学政治経済学術院助手鈴木淳平氏が報告)。現在は、こうした学会報告に対して得られた性別や教育程度等を考慮に入れた分析をさらに追加するといった修正の上、英語でPreprintを公表する段階にある。今後、Preprint公表後は、速やかに本論文が検討対象とする代表的な論文が掲載されているBritish Journal of Political Scienceに投稿する予定である。 さらに、都道府県及び政令指定都市別の生活保護データを用いて生活保護の申請・認可・却下といった関係の分析を試みる観察データを用いた研究の現在までの構想や進捗状況を「令和4年度第2回地域未来創生政策科学研究会」において報告したところ、こちらも好評が得られた。この研究成果は、日本語で論文を執筆する予定であり、実験研究は英語、観察データ研究は日本語という棲み分けのような状態になっているが、いずれにせよ、既存研究の蓄積に新たな貢献を果たすと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サーヴェイ実験に関しては、実際の実施内容が計画とやや異なっている部分もあるが、概ね順調に進み、研究成果の報告も行い始めている。それに対して、観察データの収集に関しては、順次進めているいるが、代表者の所属先に変更があり、作業が一時的に停止している時期があった。現在はリサーチアシスタントを雇用し再開しているが、この部分で若干の遅れがある。しかしながら、データは比較的順調に集まっており、サーヴェイ実験の進捗状況と合わせて考えれば、全体としては概ね順調に進展していると考えて良いのではないかと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要でも触れたように、すでに行った実験の成果報告は順調に進んでいる状況にあり、実際に国際的な有力誌へと投稿する段階にある。今後は、査読対応を含め適宜必要な修正を行っていく予定である。また、サーヴェイ実験に関しては、今後より直接的に生活保護に関する問題を捉えるための追加的な実験を計画しており、実施するための打ち合わせ等も進め、実際の実施に向けての調整が進んでいる。 観察データの収集・分析に関しても継続していく予定であるが、無事にデータが揃い次第、都道府県・政令指定都市別のパネルデータを構築し、生活保護の申請・認可・却下といった事象を説明する要因の特定に向けて分析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属先の移動などによりデータ収集作業の一時中断や、サーヴェイ実験の次年度への持ち越しなどがあり、予定よりも過少となった。いずれにせよ、これらは中止されるわけではなく、持ち越されるのみであり、計画通り実施される予定のため、次年度使用額として想定される。
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