研究課題/領域番号 |
22K13359
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
阿武 秀和 筑波大学, システム情報系, 助教 (30706734)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | マッチング / 優先順位ルール |
研究実績の概要 |
2022年度の最大の成果は"Fair priority-completion in assignment problems"と題する論文を執筆できたことである。本論文では、大学当局が様々な学部の学生たちに非分割財(例えば奨学金や交換留学のプログラムなど)を割り当てる際に、どのようなメカニズムを利用するべきかという問題について考察を行っている。この問題の著しい特徴は、同じ学部の学生同士には明確な優先順位がついている一方で、異なる学部の学生同士には優先順位がついていないという点である。各学部はなるべく多くの機会を自学部の学生に提供するために、優先順位上位の枠を獲得することが望ましいが、この点において稀少な複数財割り当ての問題が生じる。主定理においては、本モデルにおける弱コアが「排除コア」と呼ばれる比較的新しいコア概念と等価であることを示した上で、優先順位ルールの値と一致することを示した。また、伝統的な割り当て問題では、個別学生間の公平性を追求する試みが多いが、それに加えて所属組織間での公平性に着目した研究は少ないので、この点において分野に新たな視点を提供することができたと考えている。本論文を、筑波大学社会工学コモンズのdiscussion paper seriesの一編として公開した。 本研究課題である複数財割り当て問題の関連問題として、確率的非分割財割り当てメカニズムの設計問題があるが、こちらの問題でも新たな成果をあげることができた。こちらはまだ論文化はできていないが、これを完了することを次年度の最優先課題としたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要欄でも述べたように、複数財割り当ての問題については"Fair priority-completion in assignment problems"と題する論文を執筆できたことが最大の成果である。当初の計画通り、非分割財配分問題の文脈において個人間の公平性と所属機関間の公平性の二つに注目した二重の意味での公平性を実現するための方策について考察した論文を執筆し、完成することができた。最終的な目標は本論文を専門誌に掲載することであるからまだ残された作業はあるものの、分析と論文執筆の作業を完了できたので、本研究課題の進捗状況は順調であると言うことができる。 またその過程で、関連問題における新たな研究課題に気がつくことができた。確率的割り当てメカニズムの設計問題における耐戦略的メカニズム設計の難しさを表す定理をいくつか証明することができた。こちらは当初から計画したものではないので本研究課題の進捗が順調であるか否かとは関連がない結果ではあるものの、派生的な研究結果として本研究課題の成果をより実りあるものとする成果と言えると思う。こちらの成果はまだ論文化するところまでは進んでいないが、"Fair priority-completion in assignment problems"を出版するための作業と並行して論文執筆を進めていき、同時あるいは続けてこちらの成果も出版にこぎつけたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方法については、当初の計画から変更すべき点は特にない。本研究課題は理論研究であるため、関連文献の収集、問題の分析および得られた成果を論文化して発表することを継続していく。 22年度に執筆した論文"Fair priority-completion in assignment problems"については、既に論文を筑波大学社会工学コモンズdiscussion paper seriesの一編として公開するところまでできており、そのために英文校正を依頼するなど出版に向けた作業は概ね完了しているので、23年度には専門誌への投稿をして査読を受ける。 確率的割り当てメカニズムの設計問題に関わる新たな成果についてはまだ論文化に至っていないため、23年度前半の目標はこれを執筆し完成させることである。また、この成果に極めて関連の深い研究を行ってきた専門家が複数いるので、セミナー報告を行ってアドバイスを仰ぐなど論文に有益な情報を得るための努力を続けたい。
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