研究課題/領域番号 |
22K13368
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
岸下 大樹 東京理科大学, 経営学部ビジネスエコノミクス学科, 講師 (90876088)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 戦略的情報伝達 / 政治的エージェンシー / 監視機能 / 野党 / メディア / 誤情報 / 確証バイアス |
研究実績の概要 |
(1)与党の行動を有権者が統制する上で、野党からの情報伝達が期待される。監視役としての役割を野党が果たせるかどうかを、チープトークモデルを用いて分析した論文を執筆した("Does Informative Opposition Influence Electoral Accountability?")。野党が与党の提出した法案に反対することが、法案が有権者にとって好ましくないことを一定程度示唆するものであったとしても、野党の反対は与党の評判だけでなく野党の評判も低下させる結果、選挙結果に影響を与えないこと、その結果、野党は監視役としての機能を果たせないことを明らかにした。 (2)メディアも政治家の行動を統制する上での監視役としての機能が期待されている。しかし、メディアが正確な情報を入手するためには、監視する対象である権力者への情報アクセスを得ることが欠かせない。この点に着目し、監視対象である権力者がメディアの情報源でもある場合、権力者は情報アクセスをだれに与えるかを戦略的に選ぶことで、メディアをおもねらせることが可能になることを示した("Watchdog versus Yes Man: News Source and Media Competition")。 (3)政治家が少数の有権者しか信じていない誤情報を主張することがある。政治家による誤情報の拡散の背後にあるインセンティブを分析した("Strategic Misinformation: The Role of Heterogeneous Confirmation Bias")。有権者が確証バイアスを持つ時、誤情報を主張すると人数としては少数だが固い支持基盤を獲得できる。そのため、能力の低い政治家が誤情報を主張することを示した。また、ソーシャルメディアの発達と政治家の誤情報拡散インセンティブの関係性も明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題では、与党以外の情報伝達の担い手として、野党及びメディアの役割を分析することとしていた。既にそれぞれに関する研究をひとつずつ終えており(上述の(1)(2))、それらは既に国際学術誌に投稿中である。また、関連する新しい研究も進めることができており(上述の(3))、計画以上に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
すでに投稿中の論文について、国際学術誌から採択されるよう努力する。併せて、研究課題に沿って新しい研究も進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
依然としてCOVID-19の影響からオンラインやハイブリット開催の学会が多く、旅費の支出が当初の想定よりも少なかったため。次年度は海外学会も含め旅費の支出が増えることが予想され、その分に使用する予定である。
|