研究課題/領域番号 |
22K13368
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
岸下 大樹 東京理科大学, 経営学部ビジネスエコノミクス学科, 講師 (90876088)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 社会規範 / 政治的関心 / 陰謀論 / 動機づけられた推論 / サーベイ実験 / 再分配 |
研究実績の概要 |
昨年度報告書に記した(1)~(3)に加えて、下記の研究を行った。 (4)社会規範に反する極端な主張を行う政党への投票は、社会的圧力によって抑圧される。しかし、選挙結果からある程度の人々がそうした主張を支持していることが分かると社会的圧力が弱まり、急進政党も次期選挙で票を集めることが可能になる。以上を踏まえ、急進政党は社会規範を弱めようとし、主流政党は社会規範を維持しようとするだろう。この点に関する理論研究を行った。草稿は概ね書き終わっており、ワーキングペーパーとして公開する準備を進めている。 (5)情報の受け手である有権者は政治にいつも関心を持つわけではない。政治的知識の少ない低所得者は、政治関心を持つ費用が高いと想定される。この点を踏まえ、①低所得者の政治関心は、グローバル化に伴う各国間の税競争が強まるほど低まり、低所得者の政治的過小代表が深刻化すること、②その結果資本課税が減少することを理論的に示した。この研究はワーキングペーパーとして公開済みである。 (6)近年、陰謀論が政治に与える影響に注目が集まっている。経済的不平等が低所得者の陰謀論の受容を促すこと、その結果経済的不平等の拡大が所得再分配への支持をかえって低下させ、再分配を減少させてしまう可能性があることを理論的に示した。この研究はワーキングペーパーとして公開済みである。 (7)有権者が発信された情報にどの程度説得され、政策選好を変化させるかを実証的に明らかにすることも重要である。健康保険から得られる自己利益を伝えることが、健康保険制度への支持を高めるかに関するオンラインサーベイ実験を日本で行い、ワーキングペーパーとして公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)の論文が政治学で定評のある国際学術誌であるQuarterly Journal of Political Science誌から採択された。(2)(3)の論文についても国際学術誌に投稿中である。加えて、研究課題に関連する新たな研究を4つ進めることができた(研究(7)は国際学術誌から再投稿の要求を受けている)。このほかにも進行中の研究がいくつか存在しており、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
既に執筆済みの論文については、定評のある国際学術誌への採択を目標に論文の改訂を行う。加えて、新たな研究もいくつか進め、研究課題の進展を図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度はCOVID-19の影響から旅費等の支出が少なくなっていた。2023年度より予定通りの執行が可能となっているが、初年度の影響を受け今年度も一部次年度使用額が生じた。出張旅費・論文の校正費等に使用する。
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