研究課題/領域番号 |
22K13369
|
研究機関 | 大阪学院大学 |
研究代表者 |
長塚 昌生 大阪学院大学, 経済学部, 准教授 (20759310)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 選好誘発手法 / 明確支配戦略 / クロックオークション |
研究実績の概要 |
本研究は、実験経済学で消費者に真の支払い意思を表明させるために用いられてきたBDM法(Becker, deGroot, and Marschak (1964))を、行動メカニズムデザインの知見を用いて改良することを目的としている。BDM法は、確率を利用して消費者の隠れた支払い意思の表明を誘発するために開発されたものである。BDM法は、正直に支払い意思額を表明することが弱支配戦略となっており、理論的には極めて優れた性能を発揮する。しかし、BDM法の表明額と支払額を分離するという考え方は、実験対象者を混乱させ、真の支払い意思を申告させることができない可能性があることが報告されている。近年、メカニズムデザインにおいて、Li(2017)が競り上げ方式のイングリッシュオークションが、BDM法と同じ理論構造を持つ封印入札方式のセカンドプライスオークションよりも実験パフォーマンスが高い理由を明示的耐戦略性(Obviously Strategyproofness)によって説明している。本研究では、明示的耐戦略性(Obviously Strategyproofness)を考慮したLi(2017)のメカニズムデザインをBDM法に適用することで、真の支払い意思額が申告されやすくなるかどうかを以下の実験により検証する。(1)通常のBDM、(2)ascending BDM、(3)明示的耐戦略性の効果を検証するためのascending BDM。 実験の結果として、通常のBDM(1)が理論値に近いパフォーマンスを示し、ascending BDM(2)との間に統計的に有意な差は見られなかった。しかし、(2)と(3)のパフォーマンスには有意差が観察され、被験者が明示的耐戦略性の理論のような意思決定プロセスで情報を処理していないことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験の当初想定していない理論的予測とは異なる結果が観察された。このため、今年度計画していた実装に向けての応用的研究よりも、理論的背景の再考や、国際学会での報告などで広く意見を収集するなど、最終年度の研究計画の変更が予想されることからやや遅れるとした。
|
今後の研究の推進方策 |
当初予測していた理論通りの行動が観察されなかったため、対立候補となる様々な説明の中から有力な説明を1点絞り、その検証実験を計画することとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験参加者が十分に集まらなかった2022年3月期の実験の影響で、実験デザインに修正が必要となり、想定していた当初計画よりも実験全体の被験者数の縮小となった。また、研究結果が想定したものと異なったので、当該年度は国際学会で報告し、様々な意見を収集するために予算を30万円程度使用する計画である。ここで得た意見をもとに、当初の理論通り行動が観察されなかった理由について検証する実験を年度内に実施する計画である。
|