研究課題/領域番号 |
22K13371
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
柴崎 慎也 東京経済大学, 経済学部, 准教授 (30826665)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 宇野弘蔵 / 河上肇 / 矢内原忠雄 / 流通論の独立化 / 発展三段階論 |
研究実績の概要 |
あらためて本研究の目的を確認しておきたい。本研究は,戦前より日本で発展してきた経済学説の日本的独自性を明らかにすることを焦点に,戦前日本の経済学説史の再構成を行うことを目的としている。この再構成に際して取り上げる対象は,宇野弘蔵,河上肇,矢内原忠雄の学説であり,この三者の各学説の関連を本研究では明らかにする。とくに焦点となるのは,宇野の理論体系の構築の過程において,河上および矢内原の学説をその先駆として捉えることができるのではないかという点にある。これをふまえ本研究では,①三者の各学説の関連を既発表の著作のみならず,未発表原稿および旧蔵書にまで遡り,物証をもって明らかにする,②宇野弘蔵の著作目録の完全版を作成する,③宇野弘蔵の新資料を発掘する,以上3点を達成することを目的としている。 以上の研究目的にしたがい,2022年度は次のように研究を進めた。まず上記①の目的にあたって,宇野弘蔵の著作物において河上肇および矢内原忠雄に言及する箇所の調査を行った。また,宇野の旧蔵書が収められた筑波大学,東京大学,法政大学の宇野文庫の調査を行った。次に上記②の目的にあたって,国会図書館をはじめ各種データベースを活用して,宇野弘蔵のクレジットがある著作物の調査を行った。また,上記③の目的にあたって,各宇野文庫および複数の大学図書館等の調査を行った。この調査によって,『経済原論』(1950・52年)の草稿である『経済原論 第一分冊』や,新しく書き直すことを目的に宇野自身が多くの書き込みを残した『経済原論』(1964年),『恐慌論』(1953年)が発表される前の講義ノート,宇野から向坂逸郎にあてた約40通の書簡などを発掘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度の研究成果は,英文学術誌論文(査読あり,共著)1件,中文学術誌論文(査読なし,共著)1件,和文学術誌論文(査読なし,単著)1件,文献目録1件,著作目録1件である。2022年度は,うえに掲げた3つの目的を達成するために膨大な資料調査に注力したため,論文等での研究成果の発表は,2023年度以降に行う予定である。なお,この間,研究が相対的に進展しているのは,上記目的の②宇野弘蔵の著作目録の作成,および,③宇野弘蔵の新資料の発掘であり,著作目録については2023年度に発表を予定している。目的の①については調査対象となる資料が予想以上に膨大であったため,多少予定より遅れをとっているため,引き続き注力していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画調書にしたがって研究を進める。2023年度は前年度の調査をふまえた論文等を研究成果として発表する。また,各宇野文庫の調査を引き続き進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は,国会図書館(東京都)での調査に注力していたため,またコロナ禍により予定していた出張をいくつか断念したため,旅費の支出が予定したようにできなかった。2023年度は遠方の図書館での出張調査を実施する。
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