研究課題/領域番号 |
22K13379
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
黒石 悠介 一橋大学, 大学院経済学研究科, 講師 (60930047)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 国際貿易 / 再配分効果 / スイッチングコスト / 賃金格差 |
研究実績の概要 |
貿易の自由化がもたらす影響は、産業間で異なる利益及び弊害はあるものの、産業内で貿易は同一の影響を与えると考えられてきた。しかし現実では、同一産業内でも貿易の自由化によって賃金格差の拡大が観測されており、貿易が及ぼす影響は歪んで行き渡っている。この貿易に由来する配分効果に関しては、メカニズムが様々に議論されているが、重要であるものの未だ研究されていない領域として、労働市場における企業を変更する際のスイッチングコストが挙げられる。 労働市場でのスイッチングコストの異質性は、貿易の自由化に関して熟練労働者に有利に働きかけて、同一産業内の賃金格差を引き起こしている可能性がある。貿易の自由化は、労働者の再配分を引き起こし、同一産業内で輸出により労働需要を増やした企業において熟練労働者が採用されやすく、また輸入競争圧力により労働需要を減らした企業において職を失った場合でも、熟練労働者が労働市場に再び戻りやすいためである。本研究では、企業を変更する際のスイッチングコストが、貿易の自由化が引き起こす労働再配分にどのような影響を及ぼすかに関して実証分析を行うことを目的とする。 令和4年度に引き続いて、令和5年度においては、ドイツの雇用研究所(The Institute for Employment Research)から提供されているドイツの労働者・事業所結合データを用いて、貿易と賃金格差に関して更なる定形化された事実を得ることに成功した。また、本研究を国内外に在籍している研究者と交流してコメントをもらうことで、令和4年度を比較してより広い観点から研究を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度に生じた急激な為替変動に伴い中止をしていた海外に在籍している研究者との交流を開始し、当プロジェクトに関してアドバイスをもらうことで、想定通りの研究成果を挙げることが出来た。また、本研究を分析する上で関連している国際貿易・応用ミクロ計量経済に関する論文を、国際ジャーナルに投稿並びに出版することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ドイツの労働者・事業所結合データを用いて、貿易と賃金格差に関する定形化された事実を得ることに努めていく。併せて、得られた事実と整合的な貿易モデルを構築することにも着手していく予定である。 また、本研究を分析する上で関連している国際貿易に関する論文を、国際ジャーナルに出版することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を円滑に行うために、大学院生をリサーチアシスタントとして雇用しているが、今年度でリサーチアシスタントに任せている作業を全て終えることが出来なかったために、人件費・謝金の支出が令和6年度にもずれ込んでいる。また、国際ジャーナルへの出版並びに学会への参加を継続するために、旅費・学会参加費・論文投稿費・英文校正費の支出も、令和6年度に繰り越す必要性が生じている。
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