研究課題/領域番号 |
22K13391
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
東 雄大 岡山大学, 社会文化科学学域, 講師 (40880703)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 地域労働市場 / 集積の経済 / 消費の波及効果 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、大都市に集まる高スキル労働者のサービス消費が当該地域でその生産を担う低スキル労働者の労働需要や賃金を上昇させる「消費の波及効果」に注目し、それが地域間賃金格差をどの程度説明するのか、この賃金上昇がどのような属性の労働力参加を促すのかを実証的に解明することである。 大都市で働く労働者が高い賃金を受け取る主要な要因の1つとして、人的資本を蓄積した能力の高い労働者が多く集まる大都市では密な人的交流が「知識の波及効果」を生み、各労働者の生産性が向上するという集積の経済が挙げられている。しかし、この要因では就業者の多くを低スキル労働者が占める職業の大都市での高賃金を説明することが難しい。本研究の重要性は、一部の研究により指摘されている「消費の波及効果」の役割に注目し、これまで十分には明らかにされていなかった大都市における低スキル労働者の高賃金の要因を解明することを試みる点にある。消費の波及効果は様々なスキルの労働者が都市という特定の範囲に近接していることを前提としている。そのため、本研究を行うことにより、コンパクトシティといった地方創生に関連する政策の妥当性を検討するための材料を提供することが期待される。 本年度は、統計法第33条に基づき政府統計の調査票情報の利用申請を総務省と厚生労働省に対して行い、実証分析に利用する予定のデータの入手を完了した。また、そのデータの整理を進めた。さらに、都市集積と労働市場の関係について議論した既存研究を調査して、この研究領域における論点を整理し、「日本労働研究雑誌」に論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究に関連する複数の既存研究を改めて調査・比較した結果、本研究で実証分析に用いるための変数を再検討する必要が生じた。そのため、政府統計の調査票情報の申請手続きと当該データの入手が遅れ、結果としてデータ整理が当初の計画よりも遅れている。ただし、申請手続きの間に追加的な文献調査を行い論文にまとめたとともに、コンピュータ等の研究環境を整えるなどできることを進めたため、これをもとに今後は遅延を取り戻せるように注力する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、入手した政府統計のデータ整理を速やかに進め、実証分析を開始する。まず、賃金構造基本統計調査を用いて、労働者の学歴により区分されるスキル別に地域間賃金格差の動向を時系列で明らかにする。そして、職業別の学歴構成や産業別のサービス需要者の構成を計算し、賃金データと組み合わせて消費の波及効果の計量分析を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により一部の学会や研究会にオンラインで参加したことで、出張旅費が減ったため。今後は学会等の出張が増えると見込まれるのでそれに充てるとともに、分析の高速化が見込まれる統計ソフトウエアの購入、論文の英文校閲費、関連図書の購入に充てる計画である。
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