研究課題/領域番号 |
22K13418
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉田 惇 九州大学, 工学研究院, 助教 (80821826)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 医師ー患者間マッチング / 実証分析 |
研究実績の概要 |
病院間の比較情報の開示が患者の病院選択に与える影響については多くの研究があるものの、病院選択だけでなく、病院をかえたことで医師ー患者間のマッチングが効率的になり、治療の成功率が改善したのかは明らかにされていない。2022年度は、以上の課題について、Human Fertilisation & Embryology Authority (HFEA)が収集した英国の不妊治療患者の個票データを用いて検証した。このデータには、患者の年齢、過去の治療回数、治療内容、出産できたかなどの詳細な情報がある。このデータを用いて、回帰不連続デザインにより治療成績公開が転院確率に影響したかを分析した。次に、転院によって治療成績は改善したかについて分析した。ここで、患者が転院するかどうかは個人の選択によるものであるため自己選択バイアスへの対処が必要である。本研究では、患者にとってはランダムな出来事であり、直接治療成功率には影響しない「成績開示があったかどうか」を操作変数として使用した。適切な操作変数か判定し、2SLS推定量を求めた。 分析の結果、成功率開示が転院する確率を引き上げたことが明らかとなった。さらに、過去の治療回数が多い人(失敗を繰り返している人)ほど転院確率が大きく、治療回数が5回以上の患者は、転院確率が50%増える結果となった。2SLSの結果、転院による治療成功率の変化は患者の年齢に応じて正負どちらも検出された。すなわち、40歳以上は成功率が上がり、39歳以下は逆に成功率が下がる結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データに関しては、パネルデータに関しては整備中によりまだ使用することができていないものの、pooled cross-sectionデータを取得することができた。このデータを用いることで、新たに分析上の課題は生じたものの、当初の計画にもとづく研究を進めることができた。なお、ここでの研究成果については、ワーキングペーパーの形で公表した。しかし、新型コロナウイルスの流行により、予定していた国際学会に参加することができず研究者からコメントを得ることが非常に困難な状況だった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスによる渡航条件が緩和されたので、2023年度は主に国際学会で発表し、コメントを得るとともに、国際ジャーナルに投稿予定である。その後は、病院数の市区町村パネルデータを作成し、長期的な視点から医療の質の地域間格差に与える影響を分析予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であったパネルデータに関してはデータ収集機関が整備中により購入できなかったことと、新型コロナウイルスにより計画していた国際学会への参加ができなかったために次年度使用額が生じた。代替案としてpooled cross-sectionデータを無償で取得することができたものの、より精緻な分析のためには追加データが必要である。これ関しては次年度以降に購入する予定である。新型コロナウイルスによる渡航制限が緩和されたため、次年度は国際学会に参加する予定である。
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