研究課題/領域番号 |
22K13422
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
笠松 怜史 武蔵大学, 経済学部, 専任講師 (50848364)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 誤情報 / 確証バイアス / ゲーム理論 / 行動経済学 |
研究実績の概要 |
本年度は研究目的(4)の政治経済学及び選挙モデルの基礎研究として、認知バイアスを持つ有権者が存在する選挙における政治家による誤情報の供給可能性についての研究を実施した。 認知バイアスを持つ有権者が存在する選挙における政治家による誤情報の供給可能性については、東京理科大学経営学部岸下大樹氏との共同研究である”Strategic Misinformation: The Role of Heterogenous Confirmation Bias”という論文が中心である。本研究では、政治家が有権者の少数に支持される誤情報を推進することがあるのはなぜかについて検討する。そのために、現職の政治家が特定の問題について真実を支持するか否定するかを決定し、公共財を生産するために努力を払うという2期間選挙モデルを構築する。その結果、低能力な現職政治家は、たとえ少数派の有権者しか信じていなくても、誤報を支持する選挙的インセンティブを持つことがわかった。このインセンティブを生み出す鍵は、確証バイアスの異質性である。確証バイアスは、人々が誤った情報を持続的に受け入れるように導く心理的バイアスである。能力の低い政治家は、有権者の確証バイアスの分布の分散が十分に大きい場合に限り、選挙によるaccountabilityを弱めるとして、真実を否定することが分かった。我々のモデルは、政治家のインセンティブと誤報の拡散を支える心理的バイアスの相互作用を理解するための基礎を提供するものである。 上記の研究を2022年度公共選択学会第26回大会にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の本年度の研究計画の順番を変更し、選挙における行動経済学・ゲーム理論的分析の研究である、認知バイアスを持つ有権者が存在する選挙における政治家による誤情報の供給可能性についての研究を行った。その結果として、予定していた内容よりも興味深い結果が得られたと考えている。また、大きな目で見ると交付申請書の研究の目的からは決してそれていないため、研究の進展に問題があるとは考えていない。 また本年度は、業績については公共選択学会など複数の研究会で報告を実施することができたことも計画どおり進んでいると言える。ただ、海外の学会での報告機会を得ることができなった点、最終的なpublishまでたどり着かなかった点を考慮して、(1)ではなく(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的(1)及び(4)を達成するために、政治・経済政策的問題についてゲーム理論を用いたモデルを構築し分析を行う。 また、本年度実施した戦略的誤情報に関する研究の改定を行い、国際学術誌への投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
英文校閲費用が予定より安価だったため、次年度使用額が発生した。次年度に研究に必要な計算機及び書籍を購入する費用の一部として使用する計画である。
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