研究課題/領域番号 |
22K13431
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
磯貝 孝 東京都立大学, 経営学研究科, 客員研究員 (20782791)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 株価 / データ分析 |
研究実績の概要 |
計画初年度は、まず分析用のデータベースシステムの新規構築作業に着手した。時系列データをSQLデータベースに格納し、複数のPCで分散処理を行うための環境を新たに構築した。格納データは株価の時系列データや上場企業の財務データなどであり、これらのデータを使って上場株式の銘柄間の株価変動に関するネットワーク構造を構築できるシステムを作成・更新した。このネットワークは、個別銘柄をノードとして重み付きのエッジで相関の強さを表す重み付き相関ネットワークになっている。相関の計算に際しては、時系列モデルによるスムージング処理を行い、強い相場変動による相関への影響を制御した計測を行っている。 上場銘柄全体を対象とする比較的大規模な相関ネットワークにおけるローカルおよびグローバルな構造を把握することが研究の第一義的な目標であり、本研究では、ネットワーク理論に基づく従来の分析を拡張するとともに、深層学習を応用した分析手法を新たに組み込むことを目指している。初年度は、オートエンコーダーのネットワーク構造データへの応用を始めとして他分野における先行研究をサーベイし、本研究との類似性や理論的な拡張の余地を視野に情報の整理を進めた。グラフ構造を有するデータのクラスタリング分析や次元圧縮などで深層学習が近年幅広く応用されるようになっており、本研究が扱う相関ネットワークにおいても、GCNやVGAEなどを用いた手法を応用することは十分可能と考えられる。現在、こうした応用分析の可能性を探るべく最近の先行研究をサーベイしており、特に深層学習によるグラフのクラスタリング、より具体的には従来のヒューリスティックな手法による分割最適化をより効率的に行う方法について情報収集を進めアルゴリズム・実装方法を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ネットワーク構造を有するデータに関する深層学習を用いた先行研究の整理に想定以上に時間を要しており、いろいろな課題が明らかになってきている。経済時系列分析によく用いられるLSTMなど通常の深層学習の手法と比べて、ネットワーク構造を有するデータへの深層学習の応用はかなり異なる側面があるため、機械学習の枠組みを本課題に即した考え方に置き換える必要がある。この分野は未だ発展途上の研究分野であり、そうした応用例を研究した先行研究はそれほど多くないようである。このため、情報収集の対象分野を広げて様々な分野の先行研究を幅広く考察するアプローチに変更した。現在も引き続きこの作業を継続しており、計画対比で大幅に時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
先行研究のサーベイ、情報整理を継続し本研究課題への具体的な応用の方向性を探索するとともに、これまでよりも大きなサイズのネットワークデータを扱えるようにするため、分析環境を再構築し、より柔軟で高速なシミュレーション等の分析を行えるようにする。先行研究の分析に関しては、従来のモジュラリティーベースの最適化アプローチを基本的に維持しつつ、深層学習の枠組みに置き換える研究例がいくつか存在しており、そうした先行研究の結果をベースに本研究課題に即した手法が開発できないか検討を進める予定である。ヒューリスティックな手法によるグラフ分割は実用面では十分な機能度を発揮しているが、全く別な手法によるグラフ分割が実現できれば、従来手法との比較考量分析が可能となり、従来手法の一段の高度化も可能となるかもしれない。従来の手法と新しい手法の併用も視野に入れて、まずは深層学習ベースの分割手法を構築することを目指す。 研究環境の再構築に関しては、データ格納のための領域拡張や計算処理速度の改善を目指してソフトウェア、ハードウェアともに改善していく計画である。同時に深層学習関連の計算環境の再構築も進めることも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の支出が予定よりも少額となった。これは初年度に計算環境の整備を行う計画であったが、必要な機材の調達に遅れが生じたことなどから支出が後ずれしたことに伴うもの。
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