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2023 年度 実施状況報告書

戦前日本の大気汚染と健康に関する実証分析

研究課題

研究課題/領域番号 22K13440
研究機関明治大学

研究代表者

井上 達樹  明治大学, 商学部, 専任講師 (10876626)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード経済史 / 計量経済史 / 近代日本 / 乳児死亡率 / 工業化 / 石炭消費 / 煤煙 / 大気汚染
研究実績の概要

プロジェクトの第二年度にあたる本年度は、前年度に構築したデータ・ベースを用いた統計解析を実施し、得られた推定結果を論文にまとめる作業を進めた。作業工程としては、第一に、前年度の記述史料を用いた史料分析により把握した史実を基に、本研究課題の核となる仮説を検証する推定モデルを定式化した。具体的には、乳児死亡率を被説明変数とし、石炭消費量を主要な説明変数とする固定効果モデルを設定した。第二に、定式化した推定モデルに基づき統計解析を行った。その結果、石炭消費量の増加が乳児死亡率の増加に繋がっていたことが明らかとなった。これは定性的な歴史史料分析により得られた仮説と整合的な結果であった。こうした健康への悪影響を示す効果はPooled OLSによる推定では得られず、パネル・データの特性を活かした固定効果モデルを用いた推定の妥当性が支持された。また、推定結果は工業水準や工場労働者数に牽引されるものではないことを確認した。第三に、戦前期における石炭消費量の増加が乳児死亡率を減少させる効果の詳細を解明するため、ラグを用いた分析や死産率に対する影響を検証する分析を実施した。さらに、乳児死亡率をより細かい期間に分けた変数を利用することで、戦前期の大気汚染は出生直後の死亡率にはあまり影響がなく、その後徐々に影響が大きくなることが明らかとなった。また、得られた推定結果の頑健性を検証するため、複数の統計学的テストを実施した。その検定結果は、いずれも統計解析結果の頑健性を支持するものであった。最後に、これら一連の分析結果を論文としてまとめる作業を進めた。作成中の論文は、査読付き国際学術誌に投稿を予定している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究計画通り、記述史料に基づいた推定モデルの構築とそれを用いた分析を実施することができた。それらを論文としてまとめる作業も進行している。以上から、本年度の研究の進捗状況は、計画にしたがい順調に進展していると判断される。

今後の研究の推進方策

本年度は順調に進展したため、次年度も記述史料分析や計量分析の精査を中心に活動を進める。これにより、工業化による石炭の大量消費がもたらした大気汚染が乳児死亡率に与えた影響をより正確に把握していく。また、新しい記述史料の収集・調査や分析結果の妥当性を歴史史料からも検証する作業も引き続き進めていく。得られた研究成果は、国内外の学会・研究集会で報告し質の向上に努め、次年度中に査読付き国際学術誌に投稿する予定である。

次年度使用額が生じた理由

人件費並びに研究成果の国際学会報告に関する研究費使用について、予定と齟齬が生じたため。次年度は上記の点を進める計画である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 明治末期日本における大気汚染と乳児死亡 ―計量分析によるアプローチ―2024

    • 著者名/発表者名
      井上達樹
    • 雑誌名

      歴史学研究

      巻: 1049 ページ: 15-25

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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