本研究は漁網会社の事業展開を中長期的に歴史・現状の双方から分析し、漁網会社が日本の水産業の技術導入や構造再編に果たしてきた役割を明らかにすると同時に、生産者がこのような漁網会社の事業拡大をどのように捉えているかについて検討することで、今後の水産業において漁網会社に求められている役割についても展望することを目的にしている。 2023年度は、歴史分析と現状分析の2点を踏まえて東京都、富山県、広島県で調査を実施し、これまでの研究成果の一部を報告・刊行した。歴史的に漁網会社と地域社会や漁業者の関係がどのように構築されてきたのかを明らかにすべく、次年度に引き続き広島県福山市の鞆の浦歴史民俗資料館で史料調査を10月、2月に2度実施した。2022年度の史料調査で収集したデータをもとに、9月に開催された水産史研究会で鞆の浦の漁網会社がどのように事業を拡大してきたのかについて報告を行った。さらに、2月にこれまでの研究成果の一部取り入れ、『「大衆魚」の誕生ー戦間期の水産物産業の形成と展開』を刊行した。震災の影響で保存が必要になった氷見地域の定置網漁業組合の史料調査を追加で3月に実施した。現状分析では3月に東京で業界団体を2か所訪問し、漁網リサイクの現状把握とともに震災の影響についての聞き取り調査を実施した。現状的な分析では1月の北陸地域の震災等の影響もあり、当初予定していた定置網の漁業経営への訪問調査の実施が困難になった。
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