研究実績の概要 |
本年度は,NPOの国際化プロセスの解明を目的に,サービスの貿易に関する一般協定(以下,GATS)の議論を使用し,サービス貿易の視点をNPOの国際的なサービス供給に導入し,分析を行った。 経営学における既存研究では,国際化に関わる活動について,製造業を中心とした議論をサービス業へと敷延させ,分析を行う研究が散見される。しかし,それではNPOが主に行うサービス供給,加えてNPOの特殊性を鑑みた国際化について不足する点が出てくる。そのため,本年度では,GATSの議論を前提に NPOの国際化に関わり分析を行った。 具体的には,『NGOデータブック』(JANIC (NGO活動推進センター,(特活)国際協力NGO センター), 1994, 1996, 1998, 2006, 2011, 2016, 2022)を用い,日本におけるNPOの国際化について,時系列的な変化,またサービス貿易の視点からそのサービス提供内容を分類し,新たな視角を提供した。 結論としては,GATTの枠組みにおける供給の4モードを元にすれば(供給モード1:越境取引,供給モード2:海外における消費,供給モード3:拠点の設置,供給モード4:自然人の移動),既存の経営学の議論は,供給モード3の議論に偏っており,NPOにおけるサービス提供を考える中では,供給モード2への注目の必要性(日本国内におけるサービス提供,つまり内的国際化)を指摘した。また,GATTの枠組みにはない第5の供給モード,クライアントに直接的なサービス提供を行うわけではないが間接的な効果をもたらす,国際的なNPO間のネットワーク形成,また自国内,現地国でのアドボカシー活動,をNPOにしかない特殊な供給モードである事を議論した。 NPOの国際化を考える中では,以上の供給モードを統合した,国際化プロセス分析の必要性を検討した。
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