研究実績の概要 |
2023年度は,スウェーデンでのサバチカル取得が実現したため,NPOの国際化プロセスの解明を目的に,サービスの貿易に関する一般協定(以下,GATS)の議論を元に,サービス貿易の視点をNPOの国際的なサービス供給に導入しつつ,スウェーデンと日本の比較研究を行った。 具体的には、NGOデータブック(1994, 1996, 1998, 2006, 2011, 2016, 2022)のデータ,また1988年より発行されている,NGOダイレクトリーのデータも補助的に活用し,日本において国際開発に携わるNPO(N=424)とスウェーデンにおける国際開発に携わるNPO(CONCORD Swedenに掲載された団体(N=82))の活動をThe Civil Society(Statistics Sweden, 2018, 2019, 2020, 2021, 2022)も参考に比較分析をした。 スウェーデンの分類で示される国際的な活動を行うNPOはICNPO分類であるため,日本のNPOとの単純な比較はできなかったが,いずれの国のNPOも複数のサービス供給モードを組み合わせ活動をしていた。日本では特定の活動(ハンセン病等)や特定の地域(ニカラグア,バヌアツ等ど)を中心に活動している歴史的な事例がある一方で,より一般的な社会問題(気候変動,子どもの権利等)に取り組んでいるのがスウェーデンのNPOであった。また比較する中で,スウェーデンでは,難民(移民)や女性の権利に関する活動があるのは特徴的であり,日本にはイスラム関連の団体はほとんどないことがわかった。 NPOは,各国の歴史的な流れ,特徴がある中,多様なサービス供給モードを組み合わせ活動をしている。以上の議論は,NPOの国際化のみならず,営利組織の国際化戦略など,経営学研究において不可欠な視点であろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に取得した,NGOデータブック(1994, 1996, 1998, 2006, 2011, 2016, 2022)の元となるデータ, NGOダイレクトリー(1988. 1990, 1992, 1994, 1996, 1998, 2000, 2002, 2004, 2008)のデータ入力を済ませ,スウェーデンのNPOとの比較研究を予定していた。しかし,ICNPO分類を用いるスウェーデンで,その供給モード2を完全に特定することができなかった点(日本では独自分類のため可能である),またNPOダイレクトリーのデータを全て入力することができなかった点から,定量的な比較検証が完全にできなかったため,やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は特に,NPOの国際化プロセスの解明を目的に,日本のNPOの国際化について,NGOダイレクトリー(1988. 1990, 1992, 1994, 1996, 1998, 2000, 2002, 2004, 2008)のデータを全て入力し,分析を行う。 NPOは,クライアントの不確実性も含めた,そのサービス提供内容に依存した国際化が想定されており,特にクライアントとの相互関係とサービス提供が標準的か,複雑かで供給モードが選択されると想定される。以上より,外的(外に向かう)国際化だけではなく,内的(国内での)国際化の選択も成されるはずである。それは,サービスの貿易に関する一般協定(GATS)の議論を元にすれば操作化が可能となる(実際に,国内と海外の両方,つまり内的・外的国際化の組み合わせにより国際化する団体が存在する)。NGOダイレクトリーは年度の活動(海外進出状況,財務データ等も含む)が記載されているため,2024年度は,国内・国外の活動の組み合わせを考慮に入れた,つまり内的国際化,外的国際化の両立、統合を可能とするNPOの国際化プロセス,ひいてはNPOの国際化を可能とする組織能力の解明を行う。
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