研究課題/領域番号 |
22K13458
|
研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
伊藤 真一 目白大学, 経営学部, 専任講師 (40825626)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | ワーク・アイデンティティ / 社会物質性アプローチ / アクター・ネットワーク理論 |
研究実績の概要 |
2023年度は,「NPO主導のクロスセクター・コラボレーションにおけるアクターの可視化と非協力的なアクターの巻き込み―アクター・ネットワーク理論における翻訳概念を用いて―」が『組織科学』第57巻第2号に掲載された。 本論文は社会的な存在と物質的な存在の相互作用が組織の活動やアイデンティティにどのような影響を与えるかを検討するために,アクター・ネットワーク理論の観点からNPO主導のクロスセクター・コラボレーションのケース分析をおこなった。分析した事例では,島,馬,花,笹,鳥といった様々な非人間やそのエージェンシーが人間や組織などの社会的アクターの行動に影響を及ぼすことや,人間,非人間を含む様々なアクターをネットワークかすることによってNPOの掲げる目標が達成されたことを指摘した。またその際,既存のクロスセクター・コラボレーションが抱える,1. コラボレーションに影響を及ぼす多様なアクターとそのエージェンシーがどのように可視化されるのかが見落とされている,2. 可視化された敵対的・非協力的なアクターをいかに巻き込むかが十分に検討されていない,という課題を,アクター・ネットワーク理論を用いた事例研究を行うことで克服できることを議論した。 また,2023年度は,ワーク・アイデンティティ研究のレビューと社会物質性アプローチの観点からワーク・アイデンティティの構成を検討するためのインタビュー調査を行った。現在は、社会物質性アプローチの観点からインタビューデータを分析している。論文は現在執筆をしており、完成し次第投稿する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の進捗は当初の予定よりもやや遅れている。その主要な要因は、複数人いるインフォーマントの状況に変化などがあったため日程の調整に時間がかかったためである。ただし、現在はデータも収集できており,今年度にその分析を進める。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は,従業員のワーク・アイデンティティの構成プロセスを検討するために,収集したデータを社会物質性アプローチの観点から分析する。その上で,社会的なアクターと物質的なアクターが相互に作用することによってワーク・アイデンティティが構成されたり変化するプロセスを描く、もしくはモデルを構築する。 現在収集しているデータは、あるAIシステムが導入された企業において、それが組織の社会的要因とうまく噛み合わないことによってワーク・アイデンティティが毀損されたケースに関連するものである。このデータを用いて、いかなるプロセスでAIシステムが従業員のワーク・アイデンティティを毀損したのかを描き、この論文を学会誌に投稿する予定である。 また、NPO従事者のワーク・アイデンティティがさまざまな非人間を含むアクターとの関係の中で変化していき、そのことがNPOの組織目標の構築・変化に影響するのかについての論文についても執筆し、これも学会発表並びに学会誌に投稿することを予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた出張の予定が2024年度にずれ込んだため、次年度使用額が生じた。 2024年度は調査や学会報告等を予定しているため、この金額を使用する。
|