研究課題/領域番号 |
22K13468
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
榎本 俊一 関西学院大学, 商学部, 准教授 (20594708)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 製造企業のサービス化 / 脱コモディティ化 / 市場誘導型イノベーション / ユーザ・イノベーション / 第4次産業革命 / スマート・ファクトリー / 工作機械 |
研究実績の概要 |
第4次産業革命に対応して生産システムのデジタル化が急速に進行しており、①生産システムのデジタル化の動向、②生産システム関連産業のビジネス革新(製造業のサービス化、戦略提携、ネットワーク、プラットフォーム等の観点から見た)、③日米独中等のプレイヤーの取組状況について企業・産業団体・有識者等に対するヒアリング等を通じて調査を行うとともに、内外の著作・論文等にあたり最新のアイデア及び情報を学び、2019年度以降の研究の集大成として「製造企業のサービス成長と脱コモディティ化~工作機械ビジネス革新を通じた市場誘導型イノベーションのモデル化~」としてまとめた。 論文は三部より構成。第1部では、「事例研究の準備」として、先行研究レビューと探索研究、脱成熟化戦略としてのサービス化の再位置づけとモデル化に係る命題抽出を行った。第2部 事例研究では「”Smart Factory”を契機とした工作機械ビジネス革新」として、①“Smart Factory”とは何か、②工作機械メーカーの独自事業領域:工場生産高効率化ソリューション、③工場生産高効率化ソリューションと製品イノベーションのサイクル化、④ライバル企業による模倣困難なビジネス・モデルの確立、⑤第1部で抽出した命題による工作機械メーカー3社の事例分析を実施。以上を受けて、第3部では「製造企業のサービス化を通じた市場誘導型イノベーションのモデル化」を行い、資本財産業について第4次産業革命に対応したビジネス革新をモデル化した。 ただし、これは「製造企業のサービス化を通じた市場誘導型イノベーション」モデル化の第一歩に過ぎず、引き続き産業機械、OT企業など資本財部門に対象を拡げモデルの通用性・妥当性を検証、更には、製造企業一般に妥当するイノベーション・モデルを構築する必要があり、2022年度は研究の発展の可能性を事例研究・文献研究により探索した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では「製造企業のサービス化を通じた市場誘導型イノベーション」のモデル化を目指しており、第一に、工作機械メーカーの”Smart Factory”を契機とするビジネス革新を事例として、DМG森精機等が新たに事業化した工場生産高効率化ソリューションと製品イノベーションをサイクル化し、モジュール化等を通じライバル企業による模倣困難なビジネス・モデルを確立しつつあることを明らかにし、「製造企業のサービス化を通じた市場誘導型イノベーション」をモデル化した。このモデルは今後、製造企業一般に妥当するモデルを構築する最初の一歩たるものである。 第二に、Wise and Baumgartner(1999)は製造企業のサービス化の意義をイノベーションによる脱市場成熟化として捉えたが、従来、彼等の”Go downstream”はイノベーション理論から十分検討されてこなかった。上記モデル構築では、先行研究レビューにより、製造企業のサービス化を脱成熟化戦略として位置付け直し、ソリューションを通じた市場誘導型イノベーションとして再把握。その上で、ユーザ・イノベーション研究の成果を活かしつつ、今後、製造企業のサービス化をイノベーション研究として発展させる上での論点・課題を整理した。 第三に、工作機械メーカーに引き続き、産業機械メーカー、OT企業など資本財部門に対象を拡げ、製造企業のサービス化を通じた市場誘導型イノベーションに係るモデルの通用性・妥当性を検証する考えであるが、2022年度、ヤマザキマザック、オークマ、DМG森精機以外の総合工作機械メーカー、シーメンス・ファナック・安川電機等産業機械メーカー、シーメンス・日立製作所等OT企業に係る文献研究・事例研究をスタートできた。 以上の三点の事由から、本研究の実施者として、本研究は科研費を頂戴したお蔭により順調に進捗しつつあるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、製造企業のサービス化を通じた市場誘導型イノベーションに関して、製造企業一般に妥当するモデルの構築に取り組むが、2023年度以降、ヤマザキマザック、オークマ、DМG森精機以外の総合工作機械メーカー、シーメンス・ファナック・安川電機等産業機械メーカー、シーメンス・日立製作所等OT企業に係る文献研究・事例研究を本格化し、工作機械ビジネス革新から抽出したモデルの通用性・妥当性を検証する。 また、工場生産高効率化ソリューションは、工作機械メーカーと顧客とのクローズドな二項関係ではなく、複数の関係事業者と含むネットワーク化を志向していることが判ったが、2010年代以降転換期にある製造企業のサービス化研究では、サービス化をサプライヤと顧客とのクローズドな二項関係で捉えず、サプライヤ、顧客に加えて川上・川下企業、研究機関等を包含するネットワーク関係で捉える動きがスタートしている。本研究では、製造企業のサービス化を通じた市場誘導型イノベーションをサプライヤと顧客とのクローズドな二項関係からだけではなく、サプライヤ、顧客に加えて川上・川下企業、研究機関等を包含するネットワーク関係からモデル化する取組をスタートする。 この点、独OT企業Siemensはユーザ、OT、IT、企業システム、ソフトウェア、クラウド企業に加えて、工作機械、産業機械、積層加工機、制御機器、材料・試薬等各種メーカーをネットワーク化し、インターネット上でアプリケーションの流通・共同開発・運用管理をプラットフォーム化。インターネットによるネットワーキングは当初より国境を越えたものであり、内外の企業・個人がグローバルにイノベーションに向けた協働・提携関係を構築、国際ビジネスを変革しつつある。このため、上記探求では、製造企業のサービス化を通じた市場誘導型イノベーションが国際提携により如何に加速化されるか等についても探求する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品管理費については、海外より図書をAmazonを通じて購入しているところ、発注先の突然の「入手予定の遅延」により予定通りの支出が妨げられ、旅費については、関西から東京への出張の必要があったものの残額が不足したため別途手弁当にて対処した結果、次年度使用額が18,291円生じた。次年度では、文献購入、旅費に加算して使用することを予定している。
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