研究課題/領域番号 |
22K13496
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
佐藤 平国 明治大学, 商学部, 専任講師 (10878804)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ニューラルネットワーク / LDA / テキスト分析 / マーケティング尺度 / 顧客エンゲージメント |
研究実績の概要 |
本年度は(1)Latent Dirichlet Allocationと順序カテゴリカル因子分析モデルの統合モデルの検証と、(2)罰則付きニューラルネットワークを用いたテキストデータと顧客エンゲージメント尺度データの同時分析に取り組んだ。(1)については、テキストデータのBag of Wordsや購買履歴データなどの離散値データと、マーケティング尺度や心理尺度によって測定された順序カテゴリデータの同時分析を目標とした潜在変数モデルとなっている。このモデルは、行動データやユーザー生成データ(コンテンツ)の分析に、消費者心理を理解する観点から解釈しやすい心理変数を補助的に利用できる。既存の類似モデルとは異なり、心理変数と行動データの関係性を探索するだけでなく、同時分析によって推定される心理変数を活用して行動データを予測したり、未観測の心理変数を予測したりすることを狙いとしている。(2)では、ホテル業界を対象とした調査データをもとに、レビューデータからの顧客エンゲージメント尺度の項目得点を再現するモデルの学習を試みた。モデルには、マーケティング尺度(心理尺度)データの分析で一般的に利用される確認的因子分析モデルやPLS-SEM(Partial Least Squares Structural Equation Modeling)の自然な拡張である罰則付きニューラルネットワークを使っている。顧客エンゲージメント尺度を選んだ理由は、レビューの投稿行動や口コミ行動と顧客エンゲージメントには高い関連性が指摘されているためである。また、ホテル業界を選んだ理由は、レビューサイトやSNSでの投稿など、インターネット上で利用できるテキストデータが豊富であると考えたためである。しかし、モデルの精度だけではなく、既存の顧客エンゲージメント尺度の理論的かつ実用上の問題が見つかっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね期待した結果が得られており、国内外の学会において研究成果を継続して発表しているため。また、副次的な成果ではあるが、マーケティングおよび消費者行動分野における新たな研究テーマも見つかっているため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)の成果であるLDAと順序カテゴリカル因子分析モデルの統合モデルについては、レビューデータとそれに関連するマーケティング尺度の分析を目標に、レビューの投稿行動や口コミ行動の先行研究、および顧客経験や知覚品質などの既存尺度を整理する。その後、インターネット調査を計画し、新たにデータを収集する予定である。データの収集にあたっては、調査対象を限定しないか、あるいは、特定の企業や業種、商品、または、カテゴリ等を分類して収集するべきか、先行研究から検討したいと考えている。次に、外部のレビューデータを用いてモデルの実用性を確認する。(2)については、実証分析を継続して行い、モデルの課題や、データ収集および利用した顧客エンゲージメント尺度の問題点を整理する。(2)の研究は既に一定の成果が得られていると考えているが、明らかとなっている課題のうち対処可能なものは改善に取り組み、成果の質を向上させたい。一方で、既に収集済みのデータには多くの限界がある。例えば、(2)の研究で利用した顧客エンゲージメント尺度は、先行研究で妥当性が認められており広く利用されている尺度を選んだが、ホテル利用にともなう特定の利用経験をもつ消費者についてのエンゲージメントを十分に判別できていない可能性がある。このような背景理論および尺度開発にかかわる問題については、別なテーマとして研究を始めたいと考えている。そのために、現在の研究と既に収集済みのデータから、可能な限り課題や改善点を明らかにする予定である。
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