研究課題/領域番号 |
22K13496
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
佐藤 平国 明治大学, 商学部, 専任講師 (10878804)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ニューラルネットワーク / 顧客エンゲージメント / テキスト分析 |
研究実績の概要 |
顧客レビューの単語頻度から顧客エンゲージメント尺度の得点を予測する罰則付きニューラルネットワークによって、その予測精度の確認や再現される因子の妥当性の検証を行った。その結果、訓練データでは比較的良い精度が得られる一方でテストデータでの精度は著しく低下することが明らかとなった。この理由としては以下が考えられる。1つ目の理由としては、予測の最終目標となる得点データ、すなわち、調査票を利用した伝統的なマーケティング尺度(心理尺度)の得点データが、単独では正解データとして扱うことが適切ではない可能性がある。この問題にはさらに2つの側面がある。1つ目は、調査票のための心理尺度は通常、複数の質問項目から共通因子を推定するという想定で作られていることである。そのため、項目単体では回答に想定していない誤差も含まれている可能性がある。2つ目は先述の側面と関連しており、そもそも回答の得点が測りたいものを測れていないという尺度自体の問題である。実際に、尺度得点とレビューの内容にはズレや偏りがあることも明らかとなっている。精度の問題に関する2つ目の理由としては、解釈性のために非常に単純なネットワークを利用していることである。一方で、もとの測定モデルである確認的因子分析(CFA)から得られる因子とテキストのみで再現された因子をそれぞれ共通の外的変数へ回帰した場合に、両者からは非常に類似した回帰係数が得られることが示された。このことから、テキストベースの因子によってCFAベースの因子の特徴を部分的には捉えることがきていると考えられる。さらに、訓練データとテストデータの組み合わせや、予測対象の因子によっても精度が異なることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
提案された分析手法に関する課題も多く残っているが、ニューラルネットワークで伝統的なデータを分析する際における罰則付き推定の有用性、伝統的な制約付き推定やベイズ推定との関連など、想定していた成果は得られていると考えている。しかし、伝統的なマーケティング尺度(心理尺度)を新しい手法によって分析することによって、それらの伝統的な尺度による測定に様々な問題が見つかっている。これらのことから、当初想定したよりも多くの課題が見つかっているため。
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今後の研究の推進方策 |
提案した罰則付きニューラルネットワーク・モデルの精度の問題に取り組むだけでなく、国際会議で指摘のあった利用すべき顧客エンゲージメントの尺度についてのレビューと検討を継続する。後者の課題は、顧客エンゲージメント尺度自体の妥当性を検証することだけでなく、項目の得点によって顧客エンゲージメントの高低が適切に測定できていないことが、予測精度に影響を与えていないか検証することも目標としている。また、どのような入力データや入力データの作成で、どのような心理的特徴が予測しやすいのかも並行して調査していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
差額は10円未満の誤差であり、次年度の予算に加算して使用する。
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