研究課題/領域番号 |
22K13502
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐藤 哲也 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (00772956)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | ロジスティクス / サプライチェーン・マネジメント / 生産管理 / 多段階最適化 / 確率計画法 / 遺伝的アルゴリズム / シミュレーション / ビッグデータ |
研究実績の概要 |
近年、ライフスタイルの多様化や電子商取引の急速な普及により、物流業界で取り扱われる荷物量は大幅に増加している。一方で、その輸送を担うトラックドライバーの労働環境は、長時間労働の常態化・人材不足・高齢化といった問題が深刻化しており、サプライチェーンのシステム改善・効率化による負荷軽減や高収益化が急務となっている。本研究では、物流拠点の配置、生産・物流拠点内の各種オペレーションのスケジューリング、拠点から顧客への配送ルート・配送順序の決定などの各種最適化問題について、現実社会において生じる不確実要素を考慮した数理モデルへと拡張を行う。さらに、それらを複合的に扱った多段階同時最適化モデルへと発展させることにより、物流業界における各種課題の解消を目指す。 本年はまず、需要が価格によって変動する条件下での生産者・小売間のサプライチェーンにおける連携について、確率計画モデルへと拡張を行った。生産者・小売の両者が個別に最適化を行う場合との数値実験による比較から、提案モデルの有効性を示した。 次に、需要量が変動する状況下における拠点間の在庫転送問題について検討を行った。在庫転送問題はサプライヤーからの製品仕入れコストと在庫を有する他拠点からの転送コストのトレードオフを考える配送計画問題である。受注した商品を在庫する拠点が分かれている場合に予め転送を行い、荷物を集約して顧客へ発送するといった問題にも適用でき、輸送量の低減なしに取り扱い荷物の総数・容積の削減を実現できる可能性があると期待する。 さらに、施設配置や配送計画、価格決定などの各種最適化問題についても、需要等が変動する状況下での確率計画モデルの検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、生産物流サプライチェーンを対象に、需要や交通状況などの各種変動要素を考慮した多段階・多目的最適化問題に対する数理モデルの開発とその解法についての検討を行うことを目的にしている。ここで、多段階モデルを構成する各階層の最適化問題及びその複合モデルにおいて、目的関数の設定やKPI (Key Performance Indicator)の定義は重要なテーマである。2022年度・2023年度は、当初より拠点間在庫転送や配送計画、施設再配置など、サプライチェーンのシステム構築に関連する各種最適化問題について個別にモデルの見直し及び確率モデルへの拡張、さらに解法の改良を中心に研究を進める計画であり、概ね順調に進展しているといえる。 一方、アンケート調査及びSNS等のインターネット空間から集められるデータの活用についても検討を行ってきたが、ChatGPTなどのAI技術が急速に発達していることから、数値実験に用いるパラメータなどのデータを収集する方法については、研究遂行の効率化を目的として、これらAI技術の活用を含め再考を行うこととする。 計算資源の増強については、解法の改良による高速化をまず優先的に行うこととした。そのため、増強のタイミング及び規模については当初の計画から変更し、既存の計算機環境を当面は用いることとする。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は引き続き、サプライチェーンの多段階・多目的最適化問題を構成する各階層の問題を対象に、その発展・深化を進める計画である。特に、施設配置、配送計画、在庫転送などの各種問題を対象に、数理モデルの見直しと確率モデルへの拡張、およびそれらの解法について、継続して検討を進める。 また、遺伝的アルゴリズムなどのメタヒューリスティクス解法による近似解導出についても、確率モデルへの対応に加え、逐次解法の併用、計算の並列化などの手法を組み合わせた高速化について併せて検討を進める。 さらに、数値実験に用いる各種パラメータデータの収集などについて、ヒアリング・アンケート調査などを行うことを検討する他、近年急速に発達しているAI技術を活用する方法についても検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、当初年度内にワークステーションの購入による計算資源増強を予定していたが、解法の工夫により高速化を目指す方針に研究計画の変更を行ったことにともない、計算資源の増強規模を見直すこととした。また、新型コロナウイルスの感染状況などを鑑み、海外で開催される国際学会への参加を見送った。これら理由のため次年度使用額が発生したが、2023年度に参加・発表予定の国際学会の旅費や論文投稿費用に充当する計画である。なお、ワークステーション購入による計算資源の増強についても、必要な規模・性能及び適切な導入タイミングについて引き続き検討を行う。
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