研究課題/領域番号 |
22K13510
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研究機関 | 園田学園女子大学 |
研究代表者 |
北田 真紀 園田学園女子大学, 経営学部, 准教授 (30824198)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 管理会計 / 無形資産 / 人的資本 / 環境業績 / 環境配慮型製品 / 温室効果ガス排出量 / インタビュー調査 / 非財務業績 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本の製造業における環境経営の課題点を明らかにしたうえで、人的資本と環境業績の関係について、定量的かつ定性的な分析により明らかにすることである。具体的には、企業の環境配慮型活動に欠かせない要素として人的資本に着目しており、人的資本の職務遂行能力を高め人材育成を強化することによって、環境業績を高めることができるという仮説について、製造業における環境経営の課題点を整理したうえで、定量的かつ定性的な分析により、環境業績を高めるために企業内部で行われている従業員教育および人材育成の実態とその成果について明らかにすることを目的とする。 本研究は3年間の期間を予定しており、1年目である2022年度は、2020年度末に実施した「日本企業の環境保全活動の実態とその取り組みの成果に関するアンケート調査」の結果を考察し、インタビュー調査を実施した。研究の過程において、アンケート調査の回答企業の多くが気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD)に賛同している現状から、情報開示へ向けた各社の新たな取組について整理した。インタビュー調査では、質問票調査によって浮き彫りになった課題点について重点的に聞き取りを行った。その結果、各社とも課題点を抱えているが、技術開発により解決、改善することができる課題というよりは、社内における環境教育および人的資源管理に根本的な課題があることが示された。またこの結果を発展させ、SDGsの17の目標のなかで、とくに企業の環境配慮型活動に関する目標についての観点から、各社の取組の実態と課題点について考察した。 以上の研究により、環境業績を高めるために企業内部で行われている人的資源管理の実態および環境対策への取組とその問題点について、さらなる問題意識と今後の研究に向けた課題を明確にすることができたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、2020年度に実施したアンケート調査の結果をもとにし、日本の製造業における環境経営の課題点を明らかにしたうえで、人的資本と環境業績の関係について、定量的かつ定性的な分析により明らかにすることができた。具体的には、2020年度末に実施した「日本企業の環境保全活動の実態とその取り組みの成果に関するアンケート調査」の結果を考察し、そのなかで数社へインタビュー調査をした結果は、「日本の製造業における環境配慮型活動の実態と課題についての一考察 ―質問票調査と聞き取り調査に基づいて―」と題して、日本管理会計学会2022年度全国大会において研究報告を行った。また、研究の過程において、日本の製造業における財務業績の特徴について考察するため、イノベーションが財務業績を高めるという仮説について、長期的な傾向を考察する実証分析を行った。また、アンケート調査の回答企業の多くが気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD)に賛同している現状から、それらの企業を対象として同様の検証も行った。この結果は「環境配慮型活動を実施する日本の製造業における財務業績の特徴についての一考察」と題する論文としてまとめ、『園田学園女子大学論文集』第57号に投稿している。これらの研究を発展させ、SDGsの17の目標のなかで、とくに「7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、「12. つくる責任 つかう責任」、「13. 気候変動に具体的な対策を」などの観点から、環境配慮型活動の実態について考察し、「日本の製造業における環境経営と環境パフォーマンスについての一考察 ―質問票調査と聞き取り調査に基づいて―」と題して、一般社団法人日本SDGs協会で報告した。 このような定量的かつ定性的な検討により、今後の研究に向けて新たな問題意識と指針を構築することができた。そのため、おおむね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、2022年度に引き続き、企業の人的資本と環境業績の関係について、定量的かつ定性的な分析に取り組む。具体的には、「人的資本の職務遂行能力を高め人材育成を強化することによって、環境業績が高まる」という仮説について日本の製造業に着目し実証分析を行う。人的資本と環境業績の長期的な関係性を分析するため、既存研究の拡張にくわえ、人的資本と環境業績の代理変数を再検討し、より精緻化した分析を行う。また、引き続き、インタビュー調査を継続し定性的な考察も行う。 以上により、人的資本が環境業績に与える影響について、定量的かつ定性的な分析により明らかにする。これらの研究過程について、方向性を確認するため、学会において報告する予定である。報告によって得られたコメントをもとに分析過程を修正し、最終的に論文にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の研究計画において、管理会計および環境会計領域にかんする国内学会や、企業主催のセミナーにおいて情報収集をするため、その参加にかかる旅費を必要とする予定を立てていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、参加した学会やセミナーの大半はオンラインにおいて開催された。そのため、参加にかかる支出が発生しなかった。また、積極的にあらゆる業種の企業へ訪問し、インタビュー調査を実施する計画を立てていたが、同様に、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、企業側のリモートワークの実施や勤務形態の変化により、オンラインでの調査に変更され、対面での十分なインタビュー調査が実施できなかった。そのため、調査にかかる旅費等の支出が発生しなかった。以上が繰越額が生じた理由である。次年度は規制が緩和されることも見込まれるため、可能な限り企業へ訪問し、対面でインタビュー調査を実施する予定である。
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