研究課題/領域番号 |
22K13609
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小南 友里 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (30803572)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | メタボローム解析 / 示差走査熱量測定 / 昆布締め / 死後変化 |
研究実績の概要 |
近年,昆布締めが刺身の呈味性を格段に上げる調理法として再注目されている.本研究では,昆布締めにおける昆布-魚肉間の物質移動や魚肉内生化学反応およびそれらの複合的な効果を明らかにすることを目的として,メタボローム解析,ペプチドーム解析および食品科学的分析を行う. ます,養殖ヒラメ肉および養殖マコンブを用いて昆布締めを調製し,経時的な水分および塩化ナトリウムの移動について検証した.昆布締めでは,魚肉からコンブへの水分の移動と逆行してコンブから魚肉への塩化ナトリウムの移動が進行することが示された.さらに,魚肉中への塩化ナトリウムの浸透が水分の移動速度に影響を及ぼす可能性が示唆された.そこで,示差走査熱量測定(DSC)によって昆布締めにおける魚肉のタンパク質変性について検討した.その結果,昆布締めによる筋タンパク質の変性点シフトが観察され,塩化ナトリウム濃度の増加および含水量の減少によるタンパク質変性の進行が示唆された. 次に,メタボローム解析を行なった.また,市販の脱水シートを用いて脱水処理を行なったものおよびプラスチックフィルムで密封して保存したものと比較した.昆布締めおよび脱水シートを用いた脱水によって,冷蔵魚肉内の死後変化の進行が抑制されることが示唆された.また,マコンブから魚肉への遊離アミノ酸の移動も確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,魚肉ーコンブ間の物質移動に関する解析を問題なく進められている.また,得られた結果からタンパク質変性の重要性が示唆されたことから,2023年度に示差走査熱量測定を購入し,分析を実施した.当初の計画を拡張することによって,物質移動に付随する筋肉タンパク質の変化を明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
魚肉ーコンブ間の物質移動が魚肉に及ぼす生化学的もしくは物理化学的な影響についての検討を進める.質量分析計の整備を終え,タンパク質分解に関する分析に着手する.また,RI検出機を用いた糖分析によってコンブから魚肉への糖類の移動についても検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
ワークステーションの購入費用を計上していたが,スパコンの利用によって支出を削減できた.余剰分を質量分析計の整備,DSC購入,RI検出機リース等に充当し,より多面的な研究実施環境を得た.R5年度の余剰学とR6年度の助成金を合わせ,R6年度に実施予定のタンパク質および多糖の分析に係る諸費用に使用するとともに,R5年度に得られた成果発表に係る旅費として使用する予定である.
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