研究課題/領域番号 |
22K13625
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
植原 俊晴 信州大学, 学術研究院教育学系, 助教 (30887279)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 概念変化 / 基本概念 / 知識理解の水準 / マイクロジェネティック法 / 小・中学生 / 理科 |
研究実績の概要 |
1年目の目標は,①理科の授業において得られた学習過程のデータをマイクロジェネティック法を用いて分析すること,②分析結果から,概念変化が生じるきっかけや思考の変化に関するデータを検証することであった。 小学6年生を対象にろうそくの燃える現象に関する探究活動を行い,児童の概念変化の実態を明らかにするために,マイクロジェネティック法を使って2人の児童を分析した。その結果,児童ごとに異なる基本概念が呼び出されることが示唆された。このことから,同じ現象を観察していても,児童が注意を向ける方向は個別であり,観察において基本概念を呼び出すきっかけとなる主観的な事実が異なることが示唆された。このことより,授業中に得られたデータをマイクロジェネティック法を用いて分析することは可能であり,概念変化のきっかけとなる事象を捉えることができると考えられた。この結果を日本教育実践学会第25回研究大会で報告した。 また,中学3年生を対象に,化学変化を化学反応式で表すために必要な化学式の知識理解の水準を調査し,概念変化の捉え方として知識理解の水準の測定が有効かどうかを検証した。その結果,化学変化を化学反応式で表すには,高度な知識理解が必要であることが示唆され,知識理解の水準の測定により,概念変化したことを捉えられると考えられた。この研究の一部は,理科教育学研究誌に掲載される予定である。 今後の課題としては,児童のデータを最大限得るために映像や音声データを工夫して収集することや,科学的に妥当な説明が可能なまでの概念変化を捉えることができていないため,児童の概念変化の全体像を明らかにすることが挙げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は、マイクロジェネティック法を用いた分析の試行とデータの収集方法の検証であった。 これについては,小学校1校と中学校1校において,理科の授業を対象にした調査を実施した。小学校では主に映像と音声データの収集,中学校ではそれらに加えて生徒にワン・ペーパー・ポートフォリオ(OPPA)を作成してもらった。小学校で得られたデータは分析済みで,その結果を日本教育実践学会第25回研究大会で報告している。一方,中学校で得られたデータについては現在分析中であり,今後,学会で報告する予定にしている。加えて,また,マイクロジェネティック法を援用した分析で児童の概念変化に関する一定の知見を得ることができ,データ収集上の課題も明らかとなった。 さらに概念変化したことを捉える手段として,知識理解の水準を測定することが考えられた。マイクロジェネティック法を援用した質的な分析と,知識理解の水準を測定する量的な分析を組み合わせることで,本研究の目的を達成することができると思われる。これらより,概ね1年目の目標は達成されたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的を達成するために,研究実施計画に基づき研究を進める予定である。また,学習前から児童・生徒が持っている既有概念についても調査を行う予定である。具体的には,マイクロジェネティック法を用いた事例的な分析と,多くの児童・生徒が持つ可能性のある既有概念や知識理解の水準を測定し,概念変化前後の分析を組み合わせて,児童・生徒の概念変化過程を明らかにし,個別の事例から一般的な傾向を導き出すことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に参加予定としていた学会がすべてオンライン開催となり,旅費が生じなかったため,次年度使用額が発生した。 次年度使用額については,研究成果を学会で報告するために必要となる旅費や論文として公開するための費用及びデータ収集を行うための人件費として執行する予定である。
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