研究課題/領域番号 |
22K13639
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
榎 景子 長崎大学, 教育学部, 准教授 (60813300)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 管理職 / ふるさと教育 / 総合的な探究の時間 / 地域創生 / 地域活性化 |
研究実績の概要 |
本年度の研究は、まず日米における管理職の職能に関する資料、特に地域との連携や地方創生に資する能力や実践についての研究論文および実践報告等の資料について収集を行った。これらの資料を解析するなかで、米国での中心的論者および理論的動向の到達点について把握することができた。 また、わが国の事例については、調査対象校として選定していた小学校および高等学校を訪問し、各校長に対してインタビュー調査を行うことができた。X県では人口減少・少子化を背景として地域の活性化に資する「ふるさと教育」が推進されている。調査対象とした2校はともに「ふるさと教育」に力を入れている学校である。小学校の校長は、従来の地域との連携では学校教育活動も地域自体も持続可能ではなくなること、大人自身が地域に対して諦念を抱いていること、X県では中高でのふるさと教育は盛んだが小学校での取組が希薄であることの3点に対して危機感を抱き、ふるさとに愛情と誇りを持つ子どもを育てることを理念として掲げながら、保護者を巻き込んで教育活動を進めていた。その意図は、保護者に地域の魅力を知ってもらうとともに、保護者同士の繋がりをつくることで、将来の地域の担い手になってもらうことにある。そのために管理職は、日常的に保護者とのつながりをつくるよう動いていた。それが教育活動の充実にも繋がっていた。 高等学校では、総合的な探究の時間を軸として、地域活性化に向けた学びが進められていた。インタビューからは、教職員の探究に対する心的ハードルの高さや地域住民と教職員間のコミュニケーション不足等が課題として明らかとなった。 以上、収集できた資料等については、次年度に引き続き解析を進め論文としてまとめていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、米国の動向については、理論的動向について資料収集を進めることができ、今後の調査対象や視点を明確化できた点で研究が進捗したと考える。 日本の動向については、実際に2つの学校の管理職に対してインタビュー調査をすることができたことが最大の成果である。当初は小中学校の調査を予定していたが、中学校への調査の見通しが立たなかった。だが、予定を変更して高等学校への調査を行うことができたため、進捗としては予定通りと言える。収集した資料の分析も概ね予定通り進んでいるため、次年度に論文化を図りたい。 以上から、調査先の変更等はありつつもおおむね当初予定していた計画の通りに研究は進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、年度前半(4~9月)は日本で収集した資料の解析および米国渡航先の選定等を行う。それを踏まえて調査先への調査依頼を開始するが、これまでつながりのない調査先へアポイントメントをとることになるため、当初予定していた通り、十分な準備をして年度後半(10~3月)で調査を実施したい。新型コロナウイルス感染症も5類へと移行したものの、海外の状況は未だ不透明であり、受入が制限される場合もありえる。その場合は、できる限り日本の調査と文献調査を進めることも視野に入れる。 また今年度の日本調査結果は学会等で報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査は概ね計画通り進んでいるものの、参加する予定だった国内学会がオンラインで実施されたため、旅費に充てていた額の一部を使用できなかった。 次年度は渡航調査を実施する予定であり、航空券も高騰していることから、繰り越した額も含めて渡航計画を立てたい。なお、新型コロナウイルスにより先方の受入が困難な場合は、日本での調査回数を増やすとともに、米国の理論的分析・文献調査で使用する書籍購入や資料整理等の物品購入として進める予定である。
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