研究課題/領域番号 |
22K13698
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研究機関 | 環太平洋大学 |
研究代表者 |
齋藤 祐一 環太平洋大学, 体育学部, 准教授 (10849722)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 持久走 / 評価 / ICT |
研究実績の概要 |
本研究は集団性のある持久走における教師の評価観の変容を明らかにすることを目的としている。そのため、持久走の評価内容を探索すること、そして、集団性のある持久走における教師の認識変容プロセスを解明することを課題として設定した。 初年度においては、持久走の評価内容の探索に焦点化し、教師が持久走において学習者の何を評価しているのかを明らかにするため、その前段階として「共走」概念の再検討を試みた。これまで「共走」概念は市民ランナーを対象として検討されてきた。「共走」は競争と対比的に導き出されながらも、それを排除せず、ゴールまで周囲のランナーと同行する中で楽しさや苦しさも含めた連帯感を味わうものとして描かれていた。本研究では中学生を対象とした授業で得られたデータを加味し、「共走」相手は人に限らないことを指摘した。具体的には音楽や、コース、風景などを挙げることができる。翻って、ランナーは「共走」する際に共にある存在が誰なのか、あるいは何なのかを知らない可能性があると言える。つまり、持久走の授業では、誰/何を他者として位置付けるのかを学ぶ場として構想することもできることが示唆された。 次年度においては、先述の知見を踏まえて、教員へのインタビューを実施し、持久走・長距離走の評価内容を明らかにする。さらに、集団性のある持久走の授業を対象としたアクション・リサーチを実施することを通して、評価内容の変容過程を明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症対応と研究フィールドの変更により、調査対象の選定が滞ってしまった。そのため、インタビューデータの収集は一事例に留まっており、文献調査を中心に展開する形になった。2022年3月には文部科学省から学校におけるマスク着用の緩和が通知されたため、次年度における調査対象の選定に関しては改善される見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
一事例ではあるものの、収集できたインタビューデータから、心拍数を指標としたランニングを指導する過程において、教員は長期的な体力向上に対して許容するようになったことが示された。すなわち、授業の成果が即座に現れることを求める考え方から、将来に成果が現れることも認めるという態度変容である。また、その姿は周囲の教員にも影響を与えており、同様の観点を有するようになった。これによって、速さや順位のみではなく、学習者が自分なりに取り組んでいる姿も評価することが校内で当然のようになっていった。結果として、それが学習者の満足感をも高めるという見解を授業者が持つようになっていた。このように、特定の教師の評価は周囲にも影響を及ぼすことが考えられ、インタビューやアクション・リサーチにおいても、それらの影響を加味したデータの収集方法を採用することが必要になる。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査対象の選定が滞ったため、特に支出割合の高いアクション・リサーチにおける物品購入およびサブスクリプション契約を実施しなかった。これが予算執行の計画を変更した理由である。次年度はアクション・リサーチを実施できる見込みであるため、繰り越した分の予算は当初の予定通りに物品購入とサブスクリプション契約に充当する。
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