研究課題/領域番号 |
22K13709
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
山平 芳美 広島市立大学, 国際学部, 講師 (40645850)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 体育授業研究 / 授業研究 / 教員研修 / PELS / Lesson Study |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、カンボジアの初等教員養成校(Provincial Teacher Training College:以下「PTTC」と略す)において、体育授業研究(Physical Education Lesson Study)が、教員の資質や能力の向上と体育授業の質の改善にどのような影響を及ぼすのか、事例的に明らかにすることである。本研究の目的に対し、研究課題として(1)から(4)を設定した。(1)途上国における授業研究支援が、どのような成果を挙げているのか。また、日本と欧州を中心に蓄積されている体育授業研究の論文から学術的な視点でその成果と課題を整理する。(2)カンボジアのPTTCにおいて、授業研究がどのように実施されているのか歴史的変遷を踏まえ現状と実態を把握する。(3)カンボジアのPTTCにおいて、体育教員が講義を行う体育科教育法の授業研究に着目し、成果や課題について明らかにする。(4)カンボジアのPTTCの学生が取り組む模擬授業や教育実習で行っている体育授業に焦点をあて、 体育授業研究に関する成果と課題について明らかにする。 本年度は、研究課題(1)に基づき、途上国における体育授業研究に携わる専門家からの情報収集や日本と欧州を中心に蓄積されている体育授業研究に関する論文から学術的な視点でその成果と課題の整理を行った。さらに、国際協力機構(JICA)草の根技術協力事業の草の根パートナー型で実施されている事業の協力を得て、カンボジアの教育局・小学校教員・体育教員を対象とした体育授業研究の研修会に参加し、アンケート調査を実施した。加えて、カンボジアのPTTCが実施している授業研究(Lesson Study)の観察、PTTCで活用されている授業研究の資料を収集することができ、PTTCにおける授業研究の実態について明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、研究実施計画当初、新型コロナウイルス感染症の影響による諸外国への入国制限や行動制限が予測されていた。したがって、1年目は日本国内のみで実施可能な調査として、途上国における授業研究支援がどのような成果を挙げているのか、また、日本と欧州を中心に蓄積されている体育授業研究に関する論文や資料から学術的な視点でその成果と課題を整理する計画であった。一方、2022年度も入国制限措置や行動制限措置がとられていたものの、段階を経て制限措置が緩和されたため、2022年9月からカンボジアへの渡航及び学校現場での調査が可能な状況となった。そして、実際に、カンボジアで体育科教育の支援を行っているNGOの協力により、カンボジアの教育局関係者・小学校教員・体育教員を対象とした体育授業研究を実施することができた。さらに、カンボジアのPTTCが実施している授業研究の観察や授業研究に関する資料を収集することができたため、当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の2年目では、研究課題(2)カンボジアのPTTCにおいて、授業研究がどのように実施されているのか歴史的変遷を踏まえ現状と実態について現地調査から把握することである。本研究の1年目で、カンボジアで既に導入されていた理科授業研究の背景を踏まえながら、PTTCで実施されている授業研究の現況について一部明らかにすることができているが、PTTCにおける授業研究の3つの段階については詳細に明らかにできていない。さらに、カンボジアのPTTCでは、PTTCの教員による授業研究とPTTCの学生による授業研究が実施されている。したがって、PTTCにおける授業研究の3つの段階やPTTCの教員による授業研究と学生による授業研究の現地調査を踏まえて、現状と実態を明らかにしていきたい。 PTTCにおける授業研究の現地調査を踏まえ、1年目及び2年目で得られた研究の成果を、3年目のPTTCにおける体育授業研究へとつなげていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症による諸外国への入国制限措置や行動制限措置が日々変化する中で、1年目である2022年度の段階で入国制限措置や行動制限措置が緩和され、カンボジアにおける現地フィールドワークが可能な状況となった。したがって、カンボジアにおけるフィールドワークを中心とした現地調査渡航費用を優先し、質的データ分析ソフトなどの購入を行わなかったことが主な要因として次年度使用額が生じた。差額分については、次年度円安や物価高の影響も想定されるため現地調査の渡航費用(旅費)への一部充当、質的データ分析ソフトの購入(設備備品費)、以上2点を中心に使用予定である。
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