研究課題/領域番号 |
22K13726
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
時岡 良太 奈良女子大学, 生活環境科学系, 助教 (80760511)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 不本意入学 / 主体性 / 学生相談 / 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ |
研究実績の概要 |
本研究では、不本意入学者が主体性を育むプロセスおよび要因を解明するために、以下2つの研究を行う。①不本意入学者が学生生活の中で主体性を育むプロセスについての仮説モデルを生成する ②研究①によって得られた仮説モデルを量的研究によって検証する 本年度では、研究①を遂行した。不本意入学を経てその後の学生生活の中で主体性を育むことのできた者を調査対象とするため、まずはそのような条件を満たす者を探すためのスクリーニング調査を行った。調査はオンラインで実施し、2年次以上の大学生・短期大学生および大学院生、または30歳以下の大学・短大・大学院を卒業した既卒者483名の回答が得られた。その中で本研究の対象者の条件に合致し、調査協力依頼に応じた20名を対象に、zoomを用いたオンラインインタビュー(半構造化面接)を行った。20名の調査実施後、不本意入学の理由の違いやコロナ禍による入校禁止期間の影響などによって体験の質が大きく異なることが明らかとなったため、分析対象者を、第1志望不合格などの学力の問題による不本意入学者で、入学直後の時期に遠隔授業が実施されていなかった13名とした。分析は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて行った。 分析の結果、不本意入学者が主体性を育むプロセスにおいては、1)他者との信頼できる関係性の形成 2)主体性の”芽生え”を受容される体験を通じて安心して主体的に動くことができるようになること、3)評価基準としての他者の目を遮断して自分自身のやりたいことを模索することが重要であることが明らかとなった。これらに対して、学生相談という場が果たすことのできる役割についても考察し、実際に高等教育の場において不本意入学者の主体性を育むための重要な示唆が得られた。 本年度に行った研究の成果については、日本学生相談学会第41回大会にて発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画からの若干の修正はあるものの、不本意入学を経て学生生活の中で主体性を育むことのできた経験を持つ人々に対してインタビュー調査を行って分析するという、最も重要な点については計画通り遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究①について学会発表を行った上で論文を執筆し、投稿する予定である。その後は、2023~2024年度にかけて、研究②を進めていく。研究①によって得られた仮説モデルにおいて、主体性の育ちに大きく寄与していると考えられる要素について、実際にどの程度寄与しているのか、実証的に検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
オンラインインタビュー調査に係る委託費用について、当初の計画では対象者への調査協力依頼やその後の連絡等の業務も一括して委託する予定だったが、倫理的な観点から研究内容についての説明や同意書の取り交わしなどを研究者自身が行った方が良いと判断し、委託する作業が減ったため、かかる費用が減ることとなった。 翌年度においては、当初の使用計画であるオンラインでのアンケート調査だけでなく、研究①をさらに発展させるための追加の調査も検討している。
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