研究実績の概要 |
ストロボ画像によるフィードバックについては,視覚的なフィードバックと分析を伴うフィードバック(分析フィードバック)が期待される。従来の視聴覚機器の活用にあたっては,ビデオや連続写真などによる動きのフィードバックを学習者に対して与える方法が一般的であったが,タブレット端末によりビデオ撮影,再生が簡便となり,且つ,ストロボ画像が安価なアプリケーションで作成できること,無償のデジタイジングソフトが提供されていることなどから,体育授業におけるストロボ画像の利用や,ストロボ画像をデジタイジング分析することによる動きの分析的視点の醸成が体育学習において期待される。 ストロボ画像の基礎的な利用価値としての「視覚的フィードバック」の観点から,ハードル走の体育授業においてストロボ画像の活用を試みたところ,ハードル走タイムが向上したほか,内省としてジャンプする意識を低減させるなどバイオメカニクス的に有用な動作改善の意識が捉えられた(Azuma & Matsui, 2023)。 また,走幅跳の体育授業において,踏切局面のストロボ画像(矢状面)を用いて学生自身が踏切角や踏切時初速などの変量をデジタイジング分析から導く「分析フィードバック」を与え,跳躍パフォーマンスに対する効果を調べたこれまでの研究(松井と東, 2019; Matsui & Azuma, 2021)とその方法論的研究(松井と東, 2020)についてそれらの経緯を整理した。すなわち,踏切の瞬間がストロボ残像間にあったとしても踏切角と初速を予測できること(推定式の提案),分析フィードバックは平均的には授業参加者全体の跳躍パフォーマンスを向上させなかったが,跳躍スキルの優れているものに分析フィードバックの恩恵が観察される傾向を明らかにすることなどが総括された(東と松井, 2022)。
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