研究課題/領域番号 |
22K13779
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
上田 和孝 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (30912563)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 産学連携 / 国際PBL / ポートフォリオ / リカレント教育 / グローバル・エンジニアリング・コンピテンシー / 国際オンライン協働学習 |
研究実績の概要 |
本研究は,産学連携での多国籍・多分野の課題解決型学習(国際PBL)により,学生・社員の能力育成を支援・評価できるポートフォリオの開発を目的とする。令和4年度の研究実績は次のとおりである。 1) 産学連携国際PBLによるGlobal Engineering Competency(GEC)の育成に関する学修プロセスについて仮説を立案し,各プロセスで学生が振り返りを行うためのポートフォリオシートを週報フォーマットの形式で試作し,国際オンライン協働学習(COIL)手法を用いた産学連携国際PBLの実践に適用しており,令和4年度は,週報に記載された内容から,MAXQDAを用いて質的データ分析を行った。既往研究では,グローバル・コンピテンシーの項目を知識,技術,姿勢,意識の4項目に分類していることに倣い,これらの4項目に関する記述について抽出し,その頻出程度について分析した結果,知識よりも,技術,姿勢,意識に関する記述が乏しく,その向上を図るためには,週報フォーマットにおいて意識的に省察・記述させる仕組みが必要であることが示唆された。 2) 申請者の先行研究と同様,COIL手法を用いた産学連携国際PBLにおいて,参加学生の事前・事後のコンピテンシーチェックを実施した結果,GECに関連する項目の自己評価スコアの向上が確認できた。 3) GEC修得の観点からポートフォリオシートに関する有効性や課題について尋ねるため,これまで産学連携国際PBLにおいて学生の受入経験の有するタイの日系企業及びベトナムの日系企業を2023年3月に訪問してインタビュー調査を実施し,GEC育成支援・評価ツールとしての同シートの有用性や改善について考察するためのデータを収集した。 4) 本研究課題に関連して,日本工学教育協会第70回年次大会・研究講演会及び同国際セッションを始め,各種研究会において研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書において述べられている1年目の「産学連携国際PBLによるGEC育成を支援・評価するポートフォリオの導入と効果検証」に関する計画内容は,新型コロナウイルス感染症の影響により,海外の企業訪問によるインタビュー調査が年度終わりの2023年3月にずれ込むなどの一部の遅れはあったものの,本科研費事業開始前から進めていた研究成果も有効に活用することで,週報フォーマットの形式でポートフォリオを導入,学生を対象に試行し,その課題について評価・改善提案ができた等,概ね順調に成果を上げている。令和5年度は,国内を含め,企業訪問によるインタビュー調査を継続的に進め,社員教育に関する効果検証を中心に取り組む予定である。 また,本研究の結果を日本工学教育協会第70回年次大会・研究講演会及び同国際セッション等にて発表できていることからも,本研究の進捗は,概ね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書において述べられている2年目の計画のとおり,下記の調査研究を進め,産学連携国際PBLの社員教育ニーズ・効果把握及びブレンド型プログラムに関する提案を行う。 1) 前年度に産学連携国際PBLを受入れた企業(国内だけでなくメコン地域4か国の企業も含む)を対象に,社員のGEC育成に関するニーズや,産学連携国際PBLの学修プロセス各段階での社員の成長,受入れにおける課題等を把握するためのインタビュー調査を実施する。その結果を基に,企業におけるポートフォリオシートの活用可能性について考察する。 2) 産学連携国際PBLの実践を通じて,ポートフォリオシート活用による学生及び社員のGEC向上効果の観点で,現場型及びオンライン型の比較分析(共通点及び相違点を明らかに)を行うことで,両型式を組み合わせたブレンド型プログラムの在り方について提案する。 また,1年目と同様,本研究を通じて得られた知見を取りまとめ,関連する国内の学会あるいは国際会議での発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により,移動制限や海外渡航の自粛期間が長かった影響もあり,令和4年度の学会参加は全てオンラインとなったことから,支出が抑えられた。この分,令和5年度は,国際会議への参加機会を増やし,本研究で得られた知見の共有に努めたい。
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