研究実績の概要 |
フッ素含有土壌(フッ素濃度:235±14 mg/kg, 粒径0~1 mm)を試料として用い,塩基性分解剤と家庭用電子レンジを併用した簡易分解について基礎検討を行った。分解剤10 mLと土壌0.1~0.5 gをテフロン製密閉容器に封入し,1分間,700 Wのマイクロ波を照射して得られた分解物上澄みをろ過および過塩素酸分解-水蒸気蒸留法に供してフッ素を分離し,La-ALC吸光光度法を用いてフッ素濃度を定量した。 超純水を用いた場合ではフッ素定量値は定量限界以下であった。分解剤として1 M Na2CO3を用いると,試料添加量が小さいほどフッ素定量値が土壌中フッ素濃度とよい一致を示したがばらつきは大きくなった(e.g.,0.1 g, 258±69 mg/kg; 0.5 g, 168±6.6 mg/kg)。土壌試料量が小さい場合は,分解剤が過剰となることで定量的に分解されたと考えられるが,一方で試料の代表性が損なわれたと考えられる。 試料量0.5 gの条件において,1 M NaOH, 50 mM および100 mM EDTAを分解剤に用いたところ105 mg/kg(NaOH); 137~143 mg/kg(EDTA)の定量値が得られ,土壌中フッ素濃度に対して40~60%程度の回収率であった。本法による土壌分解においては,Na2CO3を用いた場合の定量値が最も大きく,分解剤の塩基性強度以上に塩基濃度の強さが分解効率に影響を及ぼすことが示唆された。一方でEDTAのような錯形成剤の効果が確認されたことから,効果の高いNa2CO3とEDTAを混合して用いたところ,フッ素定量値は127±8 mg/kgとそれぞれを単独で用いた場合よりも小さくなった。たとえばH2EDTA2-によるNa2CO3の中和やイオン強度増加による活量の減少によって互いに土壌分解に及ぼす効果が相殺する可能性がある。
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