今後の研究の推進方策 |
2024年度については,研究1と研究2を実施することを計画している。 研究1では,経験サンプリング法での調査により,罪悪感が行動レベルでのセルフコントロールの成功を促進することを確認する。ある時点で欲求の葛藤におけるセルフコントロールの失敗に対して強く罪悪感が喚起されるほど,次以降の時点での欲求の葛藤の際にセルフコントロールの成功が生じやすくなる。また,より時点間隔が短いほど罪悪感による影響は大きいと予測される。また,探索的な検討として,欲求を抑えるだけでなく,セルフコントロールの失敗からの罪悪感は目標に即した行動を促進していくかについても合わせて検討していく。 研究2ではセルフコントロールに関わる「誘惑の予防」の段階での罪悪感の効果について,遅延割引課題を用いて長期的目標への選好を罪悪感が高めるかを検討する。長期的目標を選好し,主観的価値が高くなるほどセルフコントロールは容易になる(e.g., Berkman et al., 2017)。長期的目標は熟慮的処理の活性化により優勢となり(Hofmann et al., 2009),罪悪感は熟慮的処理を強める(Morto et al., 2016)。また,快楽などの即時的欲求は不道徳とみなされやすく(Hofmann et al., 2018),罪悪感は不道徳な対象への主観的価値を引き下げる(Chen et al., 2017)。そのため,罪悪感は長期的目標への選好を強めることが予測される。
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