研究課題/領域番号 |
22K13807
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
野崎 優樹 甲南大学, 文学部, 准教授 (50801396)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 情動調整 / 感情 / コミュニケーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、近年の情動研究で注目を集める「情動に関する信念」に着目し、他者の情動を調整する方略選択との関係を検討することである。本年度は、前年度実施した調査結果の取りまとめと、計算論モデリングを目的とした調査の実施に向けた準備を中心に行った。 まず、前年度実施した、ネガティブ情動を感じた出来事と気持ちが書かれた文章を読み、「気晴らし」か「再評価」のどちらを用いて相手のネガティブ情動を和らげるかを選択した割合と、情動に対する信念の個人差との関連を検討した実験データを分析した結果、情動に対する信念の中でも、特に「ポジティブ情動に対する有用性の信念」が、方略選択と有意に関連することが示された。具体的には、相手のネガティブ情動が相対的に低い場合という、再評価が効果的に働きうる時に限り、ポジティブ情動に対する有用性の信念が高い人ほど、再評価を選択する傾向が示された。この結果は、日本認知科学会第40回大会で発表を行った。 また、文脈に応じて設定されるポジティブおよびネガティブな情動の有用性に対する信念が、他者の怒り調整に対してどのように寄与するのかを日米比較した研究についても、データ分析を行った。その結果、日本でもアメリカでも、怒りが有用な他者と対立する場面では、怒り情動が有用であるという信念を実際に抱き、自分のパートナーの怒りを高めようとする傾向が高かった。反対にポジティブ情動が有用な場面では、喜び情動が有用であるという信念を実際に抱き、自分のパートナーの喜びを高めようとする傾向が高いことが示された。これらの結果は、日本感情心理学会第31回大会で発表するとともに、国際誌のJournal of Cross-Cultural Psychologyにて論文発表した。 さらに、計算論モデリングを目的とした調査の実施に向けて、文献レビューや予備データの収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果について、学会発表や国際誌での論文発表を行うことができ、さらに、計算論モデリングを目的とした調査の実施に向けて準備を進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、調査で取得したデータ分析や,新規の調査実施を通じて、情動に関する信念と他者の情動を調整する方略選択との関係を検討する予定である。その際、「ポジティブ情動に関する信念」は個人差の分散がそこまで大きくなかったことから,引き続き「ネガティブ情動に関する信念」も含めて検討対象とすることを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
円安の影響を受ける中で、現在準備中の論文について、オープンアクセス化にかかる費用を確保する必要が生じたため。
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