研究課題/領域番号 |
22K13810
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山口 一大 筑波大学, 人間系, 助教 (50826675)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 認知診断モデル / 学習診断 / パラメタ推定 |
研究実績の概要 |
認知診断モデルが学習者のつまづきについての情報を到達度テストや授業中の確認テストから推測するために有用な枠組みである。本研究課題では、学習者の背景情報やテストおよびテストの結果のフィードバックを統合的に扱うための枠組みの開発を目指す。2022年度は、学習者の背景情報・テスト解答行動を統合的に扱うための認知診断モデルの開発を行った。特に本年度、1.生徒の背景情報を含めた2段階認知診断モデルの開発、2.テスト解答時の無解答行動を扱うための統計モデルの開発、3.学習者の変化を追跡するための認知診断モデルの開発、という3点を重点的に行なった。まず、生徒の背景情報を含めた2段階認知診断モデルの開発では、学習習慣や授業中の取り組みの状況など学習者の背景情報や特徴をテスト分析に含め、学習診断に必要な認知要素(アトリビュート)の有無の組み合わせ(アトリビュートパタン)を推定するモデルを開発した。モデルの開発のみならず、パラメタの推定方法も合わせて推定することにより効率的なテスト分析を行う枠組みを提案した。次に、無解答行動をモデル化するために、テスト解答の反応時間を含めたモデルを開発し、反応時間の情報を用いて無解答項目の情報も効率的に取り組む枠組みを開発した。最後に、学習者の変化を経時的に追跡するために、能力の習得のパタンの変化をモデル化し、効率的なパラメタ推定方法を開発した。上記の3点に取り組むことで、認知診断モデルに追加の情報を含め、より実際的な環境での学習診断を可能にする基盤を整備できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学習診断情報のフィードバックのための基礎的な研究として、前述の3点を基礎的な研究として位置づけていたが、それぞれの研究について当初予定していたペースで実行できている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、予定しているパラメタ推定法の開発と自動的な項目選択法についての研究を行う予定である。大規模な教育データを用いた学習診断情報のフィードバックのためには効率的なパラメタ推定方法の開発が不可欠であり、新たに開発したモデルのうち、パラメタ推定法の開発が十分ではないモデルについての検討を行う。こうしたパラメタ推定を発展させて、認知診断モデルにおいて重要な要素である認知能力とテスト項目の関連を示したQ行列を推定する方法を扱えるように拡張を行う予定である。この点は、当初の研究計画にはなかった。しかしながら、Q行列の設定は認知診断モデルを利用において最もコストがかかる作業である。データに基づいたQ推定を可能にすることにより、この作業を簡略化したり、データによるQ行列の妥当化の方法を図る。これにより、診断情報をフィードバックする際に、その情報が信頼に足るものになると期待される。 項目選択アルゴリズムも、テスト構成の自動化には不可欠であるため、本研究で新たに開発した推定方法と整合的であり外部情報を十分に活用できる方法の開発を進める予定である。
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